会社からの「示談交渉」で絶対に失敗しない方法

ハラスメントの事実を会社が認め
「示談で解決しませんか」
と打診してきたとき、あなたはどんなふうに感じますか?
長かった戦いが終わる安堵、早く前に進みたいという気持ち、そして
「ここで失敗できない」
という強いプレッシャーが押し寄せてくるのではないでしょうか?
示談交渉は、あなたの心と生活、そして金銭的な補償を確定させる非常に重要な最終局面です。一歩間違えると、不当に低い金額で合意させられたり、将来の権利を放棄させられたりするリスクがあります。
この記事では、会社との交渉で絶対に後悔しないために、あなたが知っておくべき準備と、失敗しないための具体的な線引きについて解説します。
示談交渉をスタートする前に「絶対に確認すべき3つのこと」
会社からの打診があったからといって、すぐに交渉に応じてはいけません。焦りは禁物です。
交渉を有利に進め、適正な補償を得るために、あなたが事前に専門家の視点も取り入れて確認すべきことがあります。
1. 証拠の「量」と「質」に納得していますか?
- あなたがこれまでに集めたハラスメントの証拠(音声、メール、診断書など)を、弁護士などの専門家に見てもらい、その法的効力について確認できていますか?
- 会社が事実をどこまで認めているのかを文書で明確にしてもらっていますか?
2. 適正な示談金(慰謝料)の相場を把握していますか?
- あなたが受けたハラスメントの期間、精神的・身体的苦痛に応じて、どのくらいの慰謝料が妥当なのか、相場観を知っていますか?
- 会社が最初に提示してくる金額は、適正相場よりも低いことが多いということを知っていますか?
3. あなたの「最高の味方」は確保できていますか?
- 会社は必ず法律の専門家(顧問弁護士等)を立てて交渉に臨みます
- あなたも労働問題に強い弁護士に依頼し、交渉を代行してもらうか、少なくともアドバイスを受ける体制を整えていますか?
🔑 ワンポイント
示談交渉は、必ず弁護士に依頼するか、専門家のアドバイスを受けながら進めましょう
「示談金」と「要求項目」で失敗しないための線引き
示談交渉では、お金(示談金)だけでなく、あなたの未来を守るための非金銭的な要求を明確にすることが、失敗しないための重要な線引きとなります。
1. 示談金の相場と増額交渉の余地を知る
示談金の額は、あなたの苦痛の重さ(休職期間、精神疾患の重度など)に大きく左右されます。会社が提示した金額が相場より低いと感じた場合、弁護士と共に、以下の理由で増額を要求することが可能です。
- 加害者の悪質性
⇒ 行為の反復性、継続性、強い暴言や暴力があった場合 - 会社の対応の不備
⇒ 相談後の放置、隠蔽工作、二次被害があった場合
2. 絶対に譲ってはいけない「非金銭的要求」
お金の交渉が中心になりがちですが、以下の非金銭的な要求は、あなたの心の回復と将来のために重要です。
- 加害者への処分
⇒ 懲戒処分(減給、出勤停止など)を具体的に示談書に明記してもらう - 再発防止策
⇒ 会社として具体的な研修実施や、部署の異動を約束させる - 退職理由の変更
⇒ 「自己都合退職」ではなく、「会社都合退職」に変更してもらうことで、失業保険の給付に有利になる
3. 口外禁止条項(NDA)の注意点
示談書には、しばしばこの件について第三者に話さないという口外禁止条項(NDA)が盛り込まれます。
- 内容をよく確認
⇒ 家族や医師、弁護士にも話せない、といった過度な制限が含まれていませんか? - 義務のバランス
⇒ 口外禁止の義務が、あなただけでなく会社側や加害者にも課せられているか確認してください
🌈 ちょっと一息
示談は、加害者に対する会社の責任追及を諦めることではありません。あなたの未来を守るための合意です
示談書サイン前に「あなたが確認すべき」4つの最終チェック
交渉がまとまった後、示談書にサインする直前が、最後の、そして最も重要なチェックポイントです。この4点を専門家と共に最終確認してください。
1. 「清算条項」の範囲は適切ですか?
- 「本件に関する一切の債権債務を清算する」という文言は、今回のハラスメント問題に限定されていますか?
- 未払いの残業代やその他の未解決の債務まで放棄する内容になっていませんか?
2. 会社と加害者の責任が切り分けられていますか?
- 示談書は会社との合意ですが、加害者個人の責任(民事責任)について、別途追及する権利を残していますか?
- 示談書が、加害者個人の責任まで免除する内容になっていないか確認してください
3. 示談金を受け取る期日が明確ですか?
- 示談金(慰謝料)の支払い日、支払い方法が具体的に記載されていますか?
4. 署名する前にすべての疑問は解消されていますか?
- 示談書の内容について、少しでも疑問や不安が残っていませんか?
まとめ
今回は、会社から示談交渉を打診された際に、あなたが絶対に失敗しないための準備と具体的な線引きについて解説しました。
この記事のポイント
- 示談交渉を始める前に、証拠の確認、相場の把握、弁護士等の確保を徹底する
- 示談金だけでなく、加害者への処分や退職理由の変更といった、非金銭的要求を明確にする
- 示談書にサインする直前に、清算条項の範囲や加害者への責任追及の権利が守られているかを最終チェックする
示談交渉は、法的知識がない人にとって、会社側との間に大きな情報格差が生じる場面です。安易にサインせず、必ず専門家を味方につけ、知識を持って冷静に臨むことで、あなたは不当な合意から未来の自分を守り、適正な補償を獲得できるんです。
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