3-3-1 失った自信を取り戻す。自分の「価値」再発見ワーク

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ハラスメントは、あなたの仕事の成果だけでなく、

人格や価値観までをも否定する行為です。その結果、「自分は能力が低い、価値のない人間だ」という、誤った自己認識を植え付けられてしまうことは少なくありません。

その傷つけられた自信を回復させないまま転職活動を始めても、「どうせ自分なんて、どこへ行っても通用しない」という不安が、あなたの足かせとなってしまいます。新しいキャリアを築くための第一歩は、求人情報誌を開くことではありません

まず、あなた自身の中にすでにある「価値」や「強み」を、客観的な事実に基づいて再発見し、確認する作業が必要です。

この記事では、失われた自信を取り戻すための、具体的な3つのワーク(実践的な作業)について解説します。

―― このページはこんな3本柱でお届けします ――

🚀 過去の成功体験を書き出す / 🎯 他己分析で客観視する / 🔥 経験の意味を再定義する

ワーク1:キャリアの棚卸しと「成功体験」の可視化

ハラスメントによる否定的な評価に心が支配されると、過去の成功体験や、本来持っていたはずの自分の長所を忘れがちになります。

ステップ1:これまでの経歴をすべて書き出す

まず、新卒で入社した会社から現在に至るまで、あなたが経験してきた所属部署、役職、担当したプロジェクトなどを、時系列に沿って事実としてすべて書き出します

ここでは、その時の評価や感情は一切考慮せず、淡々と経歴をリストアップすることに集中してください。

ステップ2:それぞれの経歴で「達成したこと」を具体的に書く

次に、書き出した経歴の一つ一つについて、その時にあなたが「達成したこと」「貢献したこと」を、できるだけ具体的に思い出して記述します。

記述のポイント

  • 数字を使って具体的に表現する
    ⇒ (例)「業務プロセスを見直し、月10時間の残業を削減した」
  • 周囲からの評価を思い出す
    ⇒ (例)「〇〇の資料を作成した際、取引先から『非常に分かりやすい』と評価された」
  • 困難を乗り越えた経験を書く
    ⇒ (例)「急な仕様変更があったが、チームメンバーと協力し、納期内にプロジェクトを完遂させた」

🔑 ワンポイント
このワークの目的は、他人からの評価ではなく、あなた自身が成し遂げた「客観的な事実」に基づいて、自分の能力を再確認することです

ステップ3:達成したことから、自分の「強み」を抽出する

最後に、ステップ2で書き出した「達成したこと」のリストを眺め、それらの行動の根底にある、あなたの「強み」や「スキル」を抽出していきます。

    • 残業を削減できた⇒ 課題発見力、業務改善能力
    • 取引先から評価された⇒ 資料作成能力、顧客視点
    • プロジェクトを完遂させた⇒ 調整力、遂行力、チームワーク

この作業を通じて、あなたは加害者からの不当な評価とは無関係に、自分がいかに多くの能力と経験を積み重ねてきたかを、客観的な事実として再認識できるはずです。

🌈 ちょっと一息
ここに書き出された「事実」は、誰にも否定できない、あなたの価値の証明です。自信が揺らぎそうになった時は、いつでもこのリストを見返し、自分の足跡を確認してください

ワーク2:「他己分析」で客観的な自分を知る

ハラスメントの影響で、自己評価が極端に低くなっている場合、自分一人の力で自分の価値を再認識するのは難しいこともあります。

信頼できる第三者の視点を借りる

そのような時は、あなたのことをよく知る、信頼できる第三者の視点を借りてみましょう。自分では気づけなかった、客観的なあなたの「強み」を発見できる可能性があります。

🔑 ワンポイント
自分では短所だと思っていた部分が、他人からは長所として見えていることは少なくありません。他人の視点を借りることで、自分では気づけなかった価値を発見できるかもしれません

具体的な質問をする

ただ漠然と「私ってどう思う?」と聞くのではなく、具体的な質問をすることで、相手も答えやすくなります。

質問の例

  • 「私の長所は、どんな部分だと思いますか?」
  • 「私が仕事をしている姿を見て、すごいな、と感じたことがあれば教えてください」
  • 「客観的に見て、私にはどんな仕事が向いていると思いますか?」

誰に頼むべきか

あなたのことをよく理解し、かつ正直に、そしてポジティブな視点から伝えてくれる人が理想です。

  • 元同僚や、ハラスメントとは無関係の部署の上司
  • 学生時代の友人
  • 家族やパートナー

複数の人から得られた客観的な評価は、あなたの自信を裏付ける、力強い根拠となります。

🌈 ちょっと一息
あなたを大切に思う人たちの言葉は、ハラスメントによってかけられた「自己否定」という呪いを解く、強力な魔法となります。その温かい言葉を、素直に受け取ってみてください

ワーク3:ネガティブな経験の「リフレーミング」

これは、ある程度心が回復してきた方向けの、少し高度なワークです。ハラスメントという辛い経験の中から、未来の糧となる「学び」を見つけ出す作業です。

「リフレーミング」とは何か

リフレーミングとは、ある出来事や物事を、今までとは違う視点(フレーム)で捉え直し、その意味付けを変える心理学的なアプローチです。

🔑 ワンポイント
このワークは、ハラスメントを肯定するためでは決してありません。あなたの辛い経験の中から、未来の糧となる学びを見つけ出し、経験の「意味」を再定義するためのものです

ハラスメントの経験から得られたものを考える

ハラスメントの経験は、あなたから多くのものを奪ったと同時に、結果として、あなたに新しい強さや視点を与えてくれた側面もあるかもしれません。

リフレーミングの視点例

  • 危機管理能力が向上した
    ⇒ 理不尽な状況を乗り越えたことで、ストレスへの対処能力や、危険を察知する能力が身についた
  • 他人の痛みが分かるようになった
    ⇒ 深く傷ついた経験があるからこそ、同じように苦しんでいる人に対して、以前よりも深く共感できるようになった
  • 自分にとって本当に大切なものが明確になった
    ⇒ 高い給料や役職よりも、心理的に安全な環境や、尊敬できる仲間がいかに大切かを、身をもって学ぶことができた
  • 見る目が養われた⇒ 人や組織の本質を、より慎重に、そして深く見極める力がついた

この作業は、過去の辛い経験を、単なる「失われた時間」から、未来の自分をより強く、賢くするための「価値ある学び」へと昇華させるプロセスです。

🌈 ちょっと一息
過去の出来事そのものを変えることはできません。しかし、その出来事があなたの人生に与える「意味」は、あなた自身の力で、これからいくらでも変えていくことができます

まとめ

ここまで、失われた自信を取り戻すための、3つの具体的なワークについて見てきました。

  • ワーク1:キャリアの棚卸し
    ⇒ 客観的な事実に基づいて、自分の能力と実績を可視化する
  • ワーク2:他己分析
    ⇒ 信頼できる第三者の視点を借りて、自分では気づけない価値を発見する
  • ワーク3:リフレーミング
    ⇒ 辛い経験の中から、未来の糧となる「学び」を見つけ出す

ハラスメントによって植え付けられた自己否定感は、これらのワークを通して、客観的な事実と、他者からの肯定的な評価によって、少しずつ上書きしていくことが可能です。

揺るぎない自信の土台を再構築できたあなたは、いよいよ次のステップに進む準備が整いました。次のページでは、「もう会社選びで失敗しない。優良な転職先の見極め方」について、具体的に解説していきます。