ハラスメントの「証拠集め」に要した費用は請求可能か?

ハラスメントの証拠を集めるために
購入したボイスレコーダー代、病院で書いてもらった診断書代…。これらの費用について、
「これは後で会社に請求できるのだろうか?」
と不安に思うことはありませんか?
泣き寝入りせず、法的に問題を解決するためには証拠が不可欠ですが、そのための出費が自己負担になっては元も子もありません。
この記事では、証拠集めに要した実費が、法的に「損害賠償」の一部として認められる可能性があるのか、その非常に高いハードルと条件について解説します。
【請求が認められやすい費用】の具体例
裁判所が損害賠償の一部として費用を認めるかどうかは、その費用と「ハラスメントとの因果関係」が明確であるかが最大のポイントです。
補足:しかし、実務・判例上、すべての費用が自動的に請求できるわけではなく、個別の事情・金額・機材の種類・購入時期などが慎重に見られます。
- 医師の診断書作成費用
⇒ ハラスメントが原因で精神疾患(うつ病、適応障害など)を発症したことを証明する医学的証拠として、必要不可欠な費用です - ボイスレコーダー等の購入費用
⇒ パワハラやセクハラの言動を記録するために、必要最低限の機材(ボイスレコーダーや小型カメラ)を購入した費用です- ※ただし、「必要かつ相当」と認められる機材・金額かどうかは、証拠提出・整理状況・勤務環境等により異なります。
- 専門家への相談費用
⇒ 弁護士や専門家へ、ハラスメントの解決を目的として相談した際の法律相談料の一部です- ※弁護士費用を損害賠償として請求できるかどうかは、請求構成・実務上の判断が分かれており、必ずしも全額認められるわけではありません。
🔑 ワンポイント
請求の可否は、その費用が「ハラスメント被害を立証するために必要だった」と合理的に説明できるかどうかにかかっています
【請求が認められにくい費用】とその理由
一方で、請求は可能ですが、裁判所に「必要性・相当性」が認められにくい費用もあります。これらは「やりすぎ」と判断されるリスクがあるため注意が必要です。
- 高額すぎる調査費用
⇒ 探偵や興信所に依頼した高額な調査費用は、ハラスメント立証のために「そこまでする必要があったか」という点で争いになりやすく、損害として認められないとする判例もあります - 過剰な機材費
⇒ ボイスレコーダーであっても、不必要に高性能・高額なモデルや、複数台の購入費用は、全額が認められない可能性があります - 因果関係が不明瞭な費用
⇒ 弁護士事務所への交通費や、証拠整理のための文房具代など、ハラスメントとの直接的な因果関係を証明しにくい費用です
🌈 ちょっと一息
「認められにくい費用」も、弁護士の主張次第では認められる可能性は残されています
費用を請求するために必須の「2つの条件」
証拠集めの実費を損害賠償として認めさせるためには、法的な条件をクリアし、その証拠を提示する必要があります。
1. 「必要性」と「相当性」の主張
裁判所は、その費用がハラスメントの証拠収集のために「本当に必要だったか(必要性)」、そしてその金額が「常識の範囲内か(相当性)」を厳しく判断します。
- 必要性の主張
⇒ 「ボイスレコーダーがなければ、密室での暴言を立証できなかった」 - 相当性の主張
⇒ 「一般的な価格帯の機器を選んだ」
2. 「領収書」の絶対的な保管
これらの主張を裏付けるために、すべての領収書やレシートを必ず保管してください。
- 証拠としての領収書
⇒ 領収書がなければ、いくら費用がかかったのかを客観的に証明できません - 弁護士との相談
⇒ どの費用が「必要最小限」として認められそうか、必ず弁護士と相談し、請求する項目を精査しましょう
まとめ
今回は、ハラスメントの証拠集めに要した実費が、損害賠償として請求可能かどうかについて解説しました。
この記事のポイント
- 証拠集めの費用は、ハラスメントとの因果関係、必要性・相当性が認められれば損害賠償の一部として請求できる可能性がある
- 診断書代やボイスレコーダー代は認められやすく、高額な調査費用は認められにくい傾向がある
- 請求のためには、すべての領収書やレシートを必ず保管し、弁護士と相談することが不可欠である
※本記事は一般的な解説であり、実際に請求可能かどうかは、事案の詳細・証拠状況・予算・法的アドバイスにより異なります。請求を検討される場合は専門家の相談をおすすめします。
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