ハラスメント後の心の回復期。「やってはいけないこと」3選

職場のハラスメントから離れ、
休職したり、転職したり…。
ようやく心と体を休ませられる環境を手に入れた、大切な「心の回復期」。
しかし、
「早く元気にならなきゃ」
「何もしていない自分はダメだ」
と焦る気持ちが、かえって回復を遅らせ、自分自身をさらに追い詰めてしまうことがあります。
回復期は、骨折した足がギプスで固定されているのと同じ、非常にデリケートな時期です。良かれと思ってやったことが、実は治りかけの心にとって大きな負担になることもあるんです。
この記事では、心が本当に休息を取り戻すために、この回復期にこそ知っておいてほしい「やってはいけないこと」と、安心して過ごすためのヒントを、専門家の知見を基に解説します。
【焦らないで】回復期にありがちな「3つの落とし穴」
早く元気になりたいと願う真面目な人ほど、陥りやすい「落とし穴」があります。
もし、今のあなたが無意識にこれをやってしまっているなら、まずはそれを「やめてみる」ことから始めましょう。
やってはいけないこと①:無理にポジティブになろうとする
「前向きに考えなきゃ」
「これも良い経験だったと思えるようになろう」
と、無理にポジティブな感情を自分に強いることです。
心の傷は、無理やり蓋をしても消えるわけではありません。今は、怒り、悲しみ、悔しさといったネガティブな感情を「感じていいんだ」と自分に許可してあげることが、回復への第一歩です。
やってはいけないこと②:原因や犯人を考え続ける
「なぜ自分があんな目に」
「あの時こうすれば良かったのかも」
と、過去の出来事を繰り返し頭の中で再生し、原因を分析し続けることです。
反芻思考(はんすうしこう)と呼ばれるこの状態は、脳を疲れさせ、ストレスホルモンを分泌させ続けます。今は原因究明ではなく、まず心を休ませることが最優先です。
やってはいけないこと③:社会との繋がりを完全に断ってしまう
人に会うのが億劫で、誰とも連絡を取らない時間も、もちろん回復には必要です。
しかし、信頼できる家族や友人との最低限の繋がり(週に一度のLINEなど)まで完全に断ち、社会から孤立してしまうと、孤独感が深まり、ネガティブな思考のループから抜け出しにくくなることがあります。
「完全な孤立」と「心を守るための適度な休息」は違うんです。
🔑 ワンポイント
「何もしない」ことへの罪悪感を手放し、「今は休むのが仕事」と割り切ることが、何よりも大切です
心と体をゆるめる、具体的なセルフケア
「じゃあ、何をすればいいの?」
と不安になるかもしれません。
回復期に必要なのは、何かを「達成する」ことではなく、ただただ心と体を「ゆるめる」ことです。日常生活の中で簡単に取り入れられるセルフケアをご紹介します。
五感に働きかける
難しく考えず、自分が「心地よい」と感じることを試してみましょう。
- 朝日を浴びる
⇒ カーテンを開けて5分ほど窓辺で過ごすだけでも、体内時計が整い、気分が安定しやすくなります - 好きな香りを嗅ぐ
⇒ アロマオイルや好きな香りのハンドクリームなど、リラックスできる香りをそばに置く - 温かい飲み物をゆっくり飲む
⇒ ハーブティーや白湯などで、体の内側からじんわりと温める - 肌触りの良いものに触れる
⇒ ふわふわのブランケットや、着心地の良い部屋着で過ごす - 感動する映画や音楽に触れる
⇒ 感情を解放し、思いっきり涙を流すことは、心の浄化作用(カタルシス効果)があります。ただし、ハラスメントの体験そのものを思い出して辛くなるような場合は無理をしないでください。あくまで、物語の世界に浸って自然に涙を流す、といった形での感情解放がおすすめです
🌈 ちょっと一息
頑張る必要はありません。「気持ちいいな」と感じられれば、それで100点満点です
心の回復をサポートする「人」との付き合い方
回復期における人付き合いは、薬にもなれば、毒にもなります。自分の心を守ることを最優先に、適切な距離感を保ちましょう。
無理に人に会う必要はない
「誘いを断るのは申し訳ない」
と感じるかもしれませんが、今のあなたにとって、気を使う人付き合いは大きな負担になります。
あなたの事情を理解してくれる本当の友人なら、正直に
「今は少し疲れているから、また元気になったら会いたい」
と伝えれば、きっと分かってくれるはずです。
「聞くだけでいいよ」と伝えて話す
もし、誰かに話を聞いてほしいと思ったら、信頼できる友人や家族に「アドバイスはいいから、ただうんうんと聞いてくれるだけで嬉しい」と、先にリクエストしてみましょう。
的確なアドバイスよりも、ただただ共感してもらうことの方が、今の心には必要な栄養になることがあります。
【重要】こんな時は専門家に相談を
セルフケアは大切ですが、意志の力だけではどうにもならない時もあります。以下のような状態が2週間以上続く場合は、一人で抱え込まず、医師やカウンセラーなど専門家への相談を検討してください。
🔑 ワンポイント
これらは、専門的なサポートが必要な心からのサインです
- 食事について
⇒ 何も食べたくない、または食べ過ぎてしまう - 睡眠について
⇒ ほとんど眠れない、または逆に眠りすぎてしまう - 気持ちについて
⇒ 自分を傷つけたいという気持ちが湧いてくる - 将来について
⇒ 生きていることがつらい、消えてしまいたいと感じる
まとめ
今回は、ハラスメント後の大切な心の回復期に「やってはいけないこと」と、心が楽になる過ごし方のヒントについて解説しました。
- 回復期は、無理にポジティブにならず、「何もしない」ことを自分に許す
- 頑張るケアではなく、五感をゆるめる「心地よい」セルフケアを試す
- 人間関係も無理せず、自分の心を守ることを最優先に考える
心の回復は、右肩上がりの直線ではありません。少し元気になったかと思えば、また気分が落ち込んだり、まるで波のように行ったり来たりを繰り返します。
しかし、それは決して後退しているわけではありません。調子が良い日と悪い日を繰り返すことこそ、回復が順調に進んでいる証拠なんです。
この波を経験することで、徐々に悪い日の程度が軽くなり、良い日の割合が増えていきます。
焦らないでください。自分を責めないでください。
「こんな自分はダメだ」
ではなく、
「辛い経験をしたんだから、今は休んで当たり前」
と、世界で一番、あなた自身が自分に優しくしてあげてくださいね。
→ 関連ページ:『心と体を休める ―未来のための、戦略的休息―』へ
→ 関連ページ:『専門家(医師・カウンセラー)を最高の味方にする方法』へ