育休明けの「マミートラック」とは? キャリアを阻む壁

育児休業から復帰し、
「また頑張ろう!」
という意欲に満ちていたにも関わらず…
「〇〇さんは子育て中だから、負担の少ない業務にしておいたよ」
「時短勤務だと、責任のあるポジションは難しいかな」
そんな言葉と共に、なぜか補助的な業務ばかり任されたり、重要なプロジェクトから外されたり。 そんな経験はありませんか。
一見すると「配慮」のように見えて、実は本人の意に反してキャリアアップの機会を奪ってしまう現象、それが
「マミートラック」
です。
この記事では、多くの働く女性が復帰後に直面するこの「見えない壁」の実態と、その背景にある問題について、具体的に解説していきます。
「マミートラック」の具体例と、パタハラとの違い
「マミートラック」とは、出産・育児を機に、女性が本人の意思とは関係なく、昇進・昇格の可能性が低いキャリアコースに乗せられてしまう状態を指す言葉です。
こんな経験、ありませんか?マミートラックの典型例
具体的には、職場復帰後に以下のような状況に置かれることが典型的なパターンです。
- 責任の軽い部署へ異動させられる
⇒ これまでのキャリアとは関係のない、補助的な業務が中心の部署へ配置される - 重要な仕事や会議から外される
⇒ 「時短勤務だから」「急な休みが多いだろうから」という理由で、主要なプロジェクトや意思決定の場から除外される - 昇進・昇格の対象から自然に除外される
⇒ 明確な理由なく、同期が昇進していく中で自分だけが取り残される - 「配慮」という名の過剰な業務制限
⇒ 本人はもっと働きたいと願っていても、「大変だろうから」と一方的に業務量を減らされる
🔑 ワンポイント
これらは、育児中の男性従業員の育休取得を妨害したり、不利益な扱いをしたりする「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)」とは少し異なります。マミートラックは、より「善意」や「配慮」の顔をして現れるのが特徴です
なぜマミートラックは発生する?善意という名の「無意識の偏見」
マミートラックを引き起こす上司や同僚には、悪意がないケースも少なくありません。むしろ、
「子育てと仕事の両立は大変だろうから、負担を減らしてあげよう」
という善意から行われていることさえあります。
しかし、その「善意」の根底には、多くの場合、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」が潜んでいます。
職場に潜むアンコンシャス・バイアス
- 「母親は仕事よりも家庭を優先するべきだ」という固定的役割分担の意識
- 「子育て中の従業員は、責任の重い仕事は望んでいないだろう」という勝手な思い込み
- 「時短勤務の従業員に重要な仕事を任せると、他のメンバーに迷惑がかかる」というリスク回避の姿勢
こうした無意識の偏見が、本人の意欲や能力を確認することなく、「配慮」という名の機会剥奪につながってしまうんです。
これは、個人の人格を無視した決めつけであり、広い意味でのパワハラの一種とも言えます。
マミートラックに乗せられたと感じた時の対処法
「もしかして、私もマミートラックに乗せられているかも…」
そう感じた時に、一人で抱え込まずに取るべき行動をご紹介します。
まずは上司との「意思疎通」を図る
何よりもまず、あなた自身のキャリアに対する意欲や考えを、直属の上司に明確に伝えることが重要です。
🌈 ちょっと一息
「時短勤務ですが、キャリアアップへの意欲は変わりません」「責任のある仕事にも挑戦したいです」といった意思を、具体的に言葉にして伝えましょう
「配慮」のつもりの上司は、あなたの本当の気持ちを知ることで、対応を改めてくれる可能性があります。
その際、今後のキャリアプランや、家庭との両立のために会社に協力してほしいことなどを具体的に話せると、より建設的な対話になります。
状況が改善しない場合は、外部の窓口へ相談
上司との対話で状況が変わらない、あるいは取り合ってもらえない場合は、一人で戦おうとせず、然るべき窓口へ相談しましょう。
- 社内の人事部やコンプライアンス窓口
- 各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)
- 労働問題に詳しい弁護士
相談する際は、いつ、誰に、何を言われたか、どのような業務内容の変更があったか、といった事実を記録しておくと、状況を客観的に説明しやすくなります。
まとめ
今回は、育休明けの従業員が直面しがちな「マミートラック」について解説しました。
- マミートラックは、「配慮」を装ってキャリアの機会を奪う見えない壁である
- その背景には、「母親は家庭優先」といった無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)がある
- まずは上司と明確な意思疎通を図り、改善がなければ外部への相談も視野に入れる
育児をしながらキャリアを追求することは、決してわがままなことではありません。それは、すべての働く人が持つべき正当な権利です。
もしあなたが「マミートラック」という壁に直面し、自分のキャリアを諦めそうになっているのなら、どうか一人で悩まないでください。あなたの意欲と能力は、決して「母親だから」という一言で制限されるべきものではないのですから。
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