SHARE:

産業医面談で「会社に伝わる情報」と「伝わらない情報」

産業医面談で「会社に伝わる情報」と「伝わらない情報」
産業医面談で「会社に伝わる情報」と「伝わらない情報」

会社から「産業医と面談するように」

と言われたとき、

 「話したことが全部、人事や上司に筒抜けになるんじゃないか?」

と不安を感じていませんか?

ハラスメントの悩みや、心身の不調について正直に話したいけれど、その情報が不利な評価につながるかもしれないと思うと、口が重くなってしまいますよね。

しかし、安心してください。産業医には、医師として厳格な守秘義務が課せられています。

この記事では、弁護士など専門家の知見を解説し、産業医面談で会社に「伝わる情報」と「伝わらない情報」の明確な線引きについて、正しい知識をお伝えします。

産業医の「守秘義務」とは?法的な基本ルール

産業医は医師であり、その業務においては医師法や個人情報保護法などに基づく厳格な守秘義務を負っています。これは、あなたが安心して健康相談を行うための大原則です。

1. 守秘義務の法的根拠

産業医があなたの情報を守る根拠は、主に以下の法律に基づきます。

  • 医師法
    ⇒ 医師には、正当な理由なく職務上知り得た秘密を漏らしてはならない義務があります
  • 個人情報保護法
    ⇒ 健康情報は「要配慮個人情報」として、特に厳格な取り扱いが求められます。本人の同意なく第三者に提供することは原則禁止です
  • 労働安全衛生法
    ⇒ 健康診断の結果など、労働者の健康情報の取り扱いについて、守秘義務が規定されています

2. 原則は「本人の同意なしに伝えない」

これらの法律に基づき、産業医は面談で知り得たあなたの健康状態や個人的な悩みについて、原則としてあなたの同意なしに会社(人事や上司)に伝えることはできません

🔑 ワンポイント
守秘義務は、産業医とあなたの信頼関係の基盤であり、法律で強く保護されています

会社に「伝わる情報」とその目的(同意不要な範囲)

厳格な守秘義務がありつつも、例外的に、産業医があなたの同意なしに会社に伝えることができる情報があります。それは、あなたの健康を守り、安全な就業環境を確保するために必要最低限の情報に限られます。

1. 伝わるのは「就業上の措置に関する意見」のみ

産業医が会社に伝えるのは、あなたの健康状態そのものではなく、「その健康状態で安全に働くために、会社がどのような配慮をすべきか」という専門的な意見です。

  • 具体的な意見の例
    ⇒ 休業が必要かどうか ⇒ 時間外労働の制限が必要かどうか ⇒ 配置転換や業務内容の変更が必要かどうか ⇒ 治療と仕事の両立のための配慮事項

2. 伝える目的は会社の「安全配慮義務」のため

これらの情報を伝える目的は、会社が労働者に対して負う「安全配慮義務」を適切に果たすためです。

  • 会社の義務
    ⇒ 会社は、従業員が安全かつ健康に働けるように配慮する義務があります
  • 産業医の役割
    ⇒ 産業医は、医学的な見地から、会社がその義務を果たすために必要な助言を行います

🌈 ちょっと一息
会社に伝わるのは診断名ではなく、あくまで「働く上での配慮」に関する意見です

会社に「伝わらない情報」と同意が必要なケース

あなたの健康に関する詳細な情報や、面談で話した個人的な内容は、原則として会社には伝わりません。もし会社がそれらの情報を必要とする場合は、必ずあなたの明確な同意が必要です。

1. 原則として会社に伝わらない情報

以下の情報は、あなたの同意なしに産業医から会社に伝わることはありません。

  • 具体的な病名や診断内容
  • 検査結果の詳細な数値
  • 現在受けている治療内容
  • 面談で話した個人的な悩み(ハラスメントの具体的な内容、家庭の事情など)
  • 家族の健康情報

2. あなたの「同意」が必要となるケース

例外的に、詳細な情報を会社と共有した方が、あなたにとってより適切な配慮(例えば、特定の業務への復帰支援プログラムの利用など)を受けられる場合があります。

  • 同意の確認
    ⇒ 産業医は、これらの詳細情報を会社に伝える必要があると判断した場合、必ず事前にあなたに説明し、明確な同意を求めます
  • 同意しない権利
    ⇒ あなたは、その説明に納得できなければ、情報提供に同意しない権利があります

3. 不安な場合は事前に確認を

もし、面談で話した内容がどこまで伝わるか不安な場合は、面談の最初に産業医に直接確認しましょう。

  • 質問例
    ⇒ 「今日お話しした内容のうち、私の同意なく会社に報告されるのは、どの範囲の情報になりますか?」

まとめ

今回は、産業医面談で会社に「伝わる情報」と「伝わらない情報」の線引きについて、専門家の知見を基に解説しました。

この記事のポイント

  • 産業医には厳格な守秘義務があり、原則として本人の同意なしに健康情報を会社に伝えない
  • 例外的に同意なしで伝わるのは、会社の安全配慮義務履行に必要な「就業上の措置に関する意見」のみである
  • 具体的な病名や個人的な悩みは、本人の明確な同意がなければ会社には伝わらない

産業医面談は、あなたの不利益になる情報を会社に伝える場ではなく、あなたの健康を守り、安全に働き続けるための重要な機会です。守秘義務というルールを正しく理解し、安心して産業医を活用してください。

→ 関連ページ:『専門家(医師・カウンセラー)を最高の味方にする方法』

→ 関連ブログ:『産業医との面談時、何を話せばいい?』

あなたへのおすすめ