「SOGIハラ」って何?知らずに加害者になる前に

最近、職場で「SOGIハラ」
という言葉を耳にすることが増えてきました。
でも、
「何それ?初めて聞いた」
という方も多いのではないでしょうか。
実は、SOGIハラは2020年のパワハラ防止法改正で、正式にパワーハラスメントの一種として認定された、とても身近で深刻な問題なんです。職場でLGBT関連のハラスメントを受けたり見聞きしたりした人の割合は22.9%と、5人に1人以上という調査結果もあります。
「彼女いないの?」
「どんな男性がタイプ?」
といった何気ない質問や、「ホモ」「レズ」などの言葉が、実は相手を深く傷つけているかもしれません。2025年現在、多様性が重視される職場環境で、知らず知らずのうちに加害者になってしまわないよう、SOGIハラについて正しく理解しておくことが大切です。
SOGIハラとは?職場で増える「見えないハラスメント」の実態
SOGIハラとは、「SOGI(ソジ)ハラスメント」の略で、性的指向(Sexual Orientation)や性自認(Gender Identity)に関連した差別的な嫌がらせのことです。
2020年6月に施行された「パワーハラスメント防止法」では、SOGIハラやアウティングもパワーハラスメントの一つに含まれるようになりました。
従来のセクハラとの違い
従来のセクシャルハラスメントが主に異性間での性的な言動を問題にしていたのに対し、SOGIハラは性的指向や性自認そのものを標的にした嫌がらせを指します。
つまり、LGBTQの当事者だけでなく、「そう見られる」だけでも被害を受ける可能性があるハラスメントなんです。
職場でよくあるSOGIハラの例
- 差別的な呼称
⇒ 「ホモ」「レズ」「オカマ」などの蔑称を使う - 異性愛者前提の質問
⇒ 「彼女いないの?」「結婚は?」などの決めつけ - アウティング
⇒ 本人の同意なく性的指向や性自認を他人に暴露する - からかいや冗談
⇒ 「男らしくない」「女らしくない」などの発言
連合の調査によると、LGBT当事者が身近にいる人では57.4%がハラスメントを見聞きしているのに対し、身近にいない人では14.8%という結果が出ています。これは、多くの職場で気づかれていないSOGIハラが実際に発生していることを示していると考えられます。
🔑 ワンポイント
性的指向や性自認は、病歴や不妊治療と同じく「機微な個人情報」として法的に保護されています。無神経な質問や冗談のつもりでも、相手を傷つける可能性があります
FAQ(よくある質問)
職場でのSOGIハラについて、よくある疑問にお答えします。
基本的な知識から具体的な対応方法まで、知っておきたいポイントをまとめました。気になる質問をクリックしてご確認ください。
LGBTQは性的マイノリティの総称で、SOGIハラはその方々への嫌がらせ行為のことです。SOGIハラは当事者でなくても被害を受ける可能性があります。
異性愛者であることを前提とした質問は、同性愛者の方にとって答えにくく、ストレスを感じる場合があります。「恋人はいますか?」という中性的な表現の方が適切です。
本人の同意なく、その人の性的指向や性自認を第三者に暴露することです。「あの人ゲイらしいよ」などの噂話も含まれ、パワハラとして法的に問題になります。
性別に関する固定観念を押し付けない、プライベートな質問を控える、差別的な言葉を使わない、などが基本です。相手の多様性を尊重する姿勢が大切です。
気づかずに加害者になってしまう「無自覚なSOGIハラ」
SOGIハラの最も深刻な問題は、多くの人が「悪気なく」行ってしまうことです。
厚生労働省の調査では、LGBTQ当事者の多くが「職場でのカミングアウトには大きなリスクが伴う」と感じており、異性愛者を前提とした日常会話に日々ストレスを感じていることが明らかになっています。
日常会話に潜むSOGIハラ
私たちが何気なく使っている言葉や質問の中に、SOGIハラの要素が隠れていることがあります。例えば、「男らしい」「女らしい」という表現は、性別の固定的役割分担を前提としており、性自認に悩む方にとって苦痛となる場合があります。
アウティングの深刻な影響
特に注意が必要なのが「アウティング」です。本人の同意なく性的指向や性自認を第三者に暴露する行為で、被害者は職場での立場や人間関係を失うリスクにさらされます。
「あの人、ゲイらしいよ」といった噂話も立派なアウティングであり、パワハラとして法的責任を問われる可能性があります。
企業が直面するリスク
SOGIハラが発生した場合、企業は安全配慮義務違反や使用者責任に基づく損害賠償責任を負う恐れがあります。また、優秀な人材の流出や企業イメージの悪化といった間接的な損失も無視できません。
🌈 ちょっと一息
「これくらい大丈夫」「悪気はない」という気持ちが、実は一番危険。相手の立場に立って考える習慣を身につけることが、SOGIハラ防止の第一歩です
FAQ(よくある質問)
職場での無自覚なSOGIハラを防ぐために、特に気をつけたいポイントをまとめました。日常的な場面での対応方法を確認してみてください。
性別の固定的役割分担を前提とした表現は、性自認に悩む方にとって苦痛となる場合があります。「力強い」「繊細な」など、個人の特性に着目した表現の方が適切です。
「恋人はいますか?」という中性的な表現を使い、答えたくない様子なら話題を変えましょう。プライベートな話題は強制するものではありません。
まず感謝の気持ちを伝え、「誰にも言わない」ことを約束しましょう。本人に「誰にどこまで話して良いか」を必ず確認し、プライバシーを厳重に守ることが重要です。
「それはちょっと...」と軽く制止したり、話題を変えたりすることから始めましょう。直接注意が難しい場合は、後で個別に話すか、上司や人事部に相談することも必要です。
職場でできるSOGIハラ防止策と相談のポイント
SOGIハラを防ぐためには、個人の意識改革だけでなく、組織全体での取り組みが不可欠です。2022年4月から中小企業にもパワハラ防止措置が義務化されており、SOGIハラ対策も企業の重要な責務となっています。
企業が取るべき具体的対策
研修・啓発活動の実施
⇒ LGBTQ+への理解を深めるための定期的な研修を行い、SOGIハラの具体例や防止方法を周知することが重要です。
相談窓口の設置
⇒ SOGIハラに特化した相談窓口を設置し、プライバシー保護を徹底した対応体制を整えることで、被害の早期発見・解決につなげられます。
就業規則の見直し
⇒ SOGIハラを明確に禁止し、違反した場合の処分について就業規則に明記することで、抑止効果が期待できます。
被害を受けた場合の相談のポイント
SOGIハラの被害を受けた場合、一人で抱え込まずに適切な相談先に連絡することが大切です。相談する際は、いつ・どこで・誰が・何をしたかを具体的に記録し、可能であれば証拠を保存しておきましょう。
周囲ができるサポート
SOGIハラを目撃した場合、見て見ぬふりをせず、可能な範囲でサポートすることが重要です。直接介入が難しい場合でも、被害者の話を聞いたり、相談窓口の情報を提供したりするだけでも大きな支えになります。
🔑 ワンポイント
相談は「勇気を振り絞った行為」です。情報の取り扱いには細心の注意を払い、本人に「誰にどこまで話して良いか」を必ず確認してから対応しましょう
FAQ(よくある質問)
SOGIハラが発生した場合の対応方法や相談のポイントについて、実践的なアドバイスをまとめました。いざという時のために確認しておいてください。
日時・場所・相手・内容を詳しく記録し、可能であれば音声やメールなどの証拠を保存してください。一人で悩まず、信頼できる人や専門の相談窓口に連絡しましょう。
労働局の総合労働相談コーナーや法テラス、LGBTQ支援団体の相談窓口など、社外の専門機関に相談することができます。匿名での相談も可能です。
安全な範囲で「それはよくないよ」と声をかけたり、被害者に寄り添ったりすることから始めましょう。深刻な場合は、被害者の同意を得て相談窓口に報告することも必要です。
労働組合がある場合は相談し、ない場合は労働局に相談することができます。また、SNSでの告発ではなく、適切な手続きを踏んで改善を求めることが重要です。
まとめ
SOGIハラスメントは、多様性が重視される2025年の職場において、誰もが知っておくべき重要な問題です。「知らなかった」「悪気はなかった」では済まされない時代になっており、個人の意識改革と組織全体での取り組みが不可欠です。
性的指向や性自認は、一人ひとりの大切なアイデンティティです。
「彼女いないの?」
「男らしくない」
といった何気ない言葉が、相手にとって深刻な苦痛となっている可能性があることを忘れてはいけません。大切なのは、相手を一人の個人として尊重し、多様性を受け入れる姿勢を持つことです。
まずは今日から、自分の言動を見直してみませんか。
性別に関する固定観念を捨て、相手のプライバシーを尊重し、差別的な言葉を使わない。そんな小さな心がけの積み重ねが、誰もが安心して働ける職場環境の実現につながります。SOGIハラのない職場は、きっとすべての人にとって働きやすい職場になるはずです。
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