パワハラ加害者の「懲戒処分」を会社に要求する方法

ハラスメントの被害に遭ったとき、
「加害者に然るべき罰(懲戒処分)を受けてほしい」
と願うのは当然の感情です。
しかし、ただ感情的に
「あの人を罰してください」
と訴えるだけでは、会社は動いてくれないことが多いのが現実です。会社が処分を下すには、会社側の法的なリスクを回避するための論理的なステップが必要不可欠です。
この記事では、会社に「懲戒処分」を真剣に検討させるための具体的な要求方法と、その論理的な3つの鉄則を解説します。
鉄則1:「懲戒処分の根拠」となる証拠を揃える
会社が加害者を処分する上で最も恐れるのは、その処分が「不当だ」として加害者本人から訴訟を起こされるリスクです。
会社が自信を持って処分を下すためには、被害者の訴えだけでなく、客観的な「証拠」が不可欠です。
- 証拠が果たす役割
⇒ 会社が加害者に反論の余地を与えず、法的に有効な処分を下すための根拠となります - 揃えるべき証拠
⇒ 「いつ、どこで、何をされたか」を明確にする録音データ、メールやチャットの履歴、医師の診断書などです
🔑 ワンポイント
「証拠」は、あなたの感情的な訴えを「法的な要求」に変えるための第一歩です
鉄則2:会社の「就業規則(懲戒規定)」を確認する
会社が従業員に懲戒処分を下すための唯一の法的根拠は、会社が定めた「就業規則」です。あなたの要求を法的に正当なものにするため、必ずこのルールを確認しましょう。
- 就業規則の確認
⇒ 会社の就業規則を入手し、「懲戒」に関する章や、「ハラスメントの禁止」に関する条項を読み込みます - 違反条文の特定
⇒ 加害者の行為が、就業規則のどの条文に違反しているかを特定します。(例:「第〇条の『職務上の地位を利用したパワーハラスメント行為』に該当する」)
🌈 ちょっと一息
「就業規則違反である」と指摘することが、会社を動かす最も強力な論理武装です
鉄則3:「何を要求するか」を文書で明確に要求する
証拠と就業規則違反の根拠が揃ったら、最後は会社に対して「書面(報告書)」で要求します。口頭での要求は「言った言わない」になり、証拠が残りません。
- 書面に記載すべきこと
⇒ 被害の事実(証拠と共に)、加害者の行為が就業規則の何条に違反するか、そして「加害者への厳正な処分(懲戒処分)を求めます」という明確な要求を記載します - 「調査結果の報告」も要求する
⇒ 「本件に関する調査の実施と、その結果及び対応について、書面にて報告してください」という一文を加え、会社が放置できない状況を作ります
まとめ
今回は、パワハラ加害者に懲戒処分を要求するための、具体的な3つの鉄則について解説しました。
この記事のポイント
- 感情論ではなく、客観的な「証拠」を揃えることが第一歩である
- 会社の「就業規則」を確認し、加害者の行為がどの条文に違反するかを特定する
- 要求は必ず「書面」で行い、「厳正な処分」と「調査結果の報告」を明確に求める
懲戒処分を要求するには、感情論ではなく「証拠」と「就業規則」という論理が必要です。
会社は従業員が安全に働ける環境を作る安全配慮義務を負っています。諦めずに、正しい手順で声を上げることが、あなた自身の権利を守ることにつながります。
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