関係を壊さずNOと言う! セクハラ防御のアサーション術

上司や取引先から
不快な性的な冗談を言われたり、執拗に食事に誘われたりしたとき、どう対応していますか?
「はっきり断ったら、今後の仕事に響くかもしれない」
「場の空気を壊したくないから、笑って流すしかない」
そうやって我慢を重ね、心がすり減っている方は少なくありません。
しかし、我慢(泣き寝入り)でも攻撃(喧嘩)でもない、第3のコミュニケーション方法があることをご存知でしょうか。それが、心理学で「アサーション」と呼ばれる技術です。
この記事では、相手を不必要に怒らせることなく、かつ自分の尊厳を守るために「NO」を伝える、セクハラ防御のためのアサーション術を解説します。
コミュニケーションには「3つのタイプ」がある
アサーションとは、「自分も相手も大切にする自己表現」のことです。これを理解するために、まずはコミュニケーションの3つのタイプを知りましょう。よくドラえもんのキャラクターに例えられます。
- ジャイアン型(攻撃的)
⇒ 相手の気持ちを無視し、自分の意見を押し付ける - のび太型(非主張的)
⇒ 自分の気持ちを抑え込み、相手に合わせて我慢する - しずかちゃん型(アサーティブ)
⇒ 相手を尊重しつつ、自分の気持ちもしっかり伝える
セクハラ被害を受けているとき、多くの人はトラブルを恐れて「のび太型」になりがちです。しかし、これでは相手の行動はエスカレートする一方です。目指すべきは、穏やかだけど芯の強い「しずかちゃん型」の対応なんです。
🔑 ワンポイント
アサーションは、相手を変える魔法ではありません。しかし、自分を守るための「境界線」を引く最強のツールになります。
主語を変えるだけ 「I(アイ)メッセージ」の魔力
では、具体的にどう話せばいいのでしょうか。最も基本にして強力なテクニックが「I(アイ)メッセージ」です。
通常、相手を責めるときは「あなた(You)」が主語になりがちです。
「(あなたは)セクハラですよ。失礼ですね」
これでは相手は攻撃されたと感じ、反発や逆ギレを招きます。
そこで、主語を「私(I)」に変えてみましょう。
「(私は)そういう話をされると、とても困ります」
「(私は)仕事とプライベートは分けたいと考えています」
このように「私はこう感じる」「私はこうしたい」と伝えるだけで、相手への攻撃ではなく自分の事実や感情の開示に変わります。これなら相手も反論しにくく、かつあなたの拒絶の意思は明確に伝わります。
そのまま使える! 実践・防御フレーズ
このIメッセージを応用した、セクハラ場面で使える具体的な返し方を紹介します。
「下ネタ・性的な冗談」への返し
- NG(のび太型)
⇒ 愛想笑いをして話題を変えようとする - NG(ジャイアン型)
⇒ 「最低ですね。訴えますよ」と罵倒する - OK(アサーティブ)
⇒ 「〇〇部長、私はそういうお話には反応できません。仕事の話に戻しましょう」
「執拗な食事の誘い」への返し
- NG(のび太型)
⇒ 「その日はちょっと予定が…」と曖昧に逃げる(別の日ならいいと誤解される) - OK(アサーティブ)
⇒ 「お誘いは光栄ですが、私は社の方と個人的なお食事には行かない主義なんです。申し訳ありません」
ポイントは、「あなた(上司)が嫌い」なのではなく、「私(自分)がそういう方針を持っている」と伝えることです。これなら相手のプライド(顔)を立てつつ、付け入る隙を与えずに断ることができます。
🌈 ちょっと一息
注意:アサーションを使っても相手が変わらない、あるいは権力を盾に強要してくる場合は、無理に会話で解決しようとせず、記録を取って第三者(相談窓口)へ相談してください。
まとめ
アサーションは、一朝一夕に身につくものではありません。最初はドキドキするかもしれませんが、小さなことから「私はこう思う」と伝えてみてください。
もし、上手く言えなかったとしても、自分を責めないでください。
「関係を壊したくない」
というあなたの優しさは、素晴らしいものです。
でも、その優しさは、あなたを傷つける相手のために使う必要はありません。まずは自分自身に対して優しくなるために、この技術を使ってみてください。
この記事のポイント
- 我慢(のび太型)でも攻撃(ジャイアン型)でもない、「アサーティブな対応」を目指す
- 主語を「私」にする「Iメッセージ」なら、角を立てずに拒絶の意思を伝えられる
- 「行かない主義なんです」と自分ルールとして断れば、相手の顔を潰さずに防衛できる
あなたの心と体は、あなただけのものです。誰にも侵害させないために、言葉という「境界線」を引きましょう。
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