退職後の健康保険はどれが得?【専門家の視点を基に解説】

退職後、会社から送られてくる健康保険の請求書や
役所から届く国民健康保険の通知書を見て、その高額さに驚愕したことはありませんか?
ハラスメントが原因で退職し、収入が不安定な時期に、この健康保険料の負担は死活問題です。退職後の選択肢は主に「任意継続」「国民健康保険」「家族の扶養」の3つですが、「昨年の収入」や「家族構成」によって、どれが「得」になるかは全く異なります。
この記事では、計算と比較を怠ると大損するリスクがある健康保険の選択について、それぞれのメリット・デメリットを専門家の視点を基に解説します。
選択肢1:任意継続(いまの保険を続ける)の計算方法と注意点
「任意継続」とは、退職後も最大2年間、在職中と同じ健康保険組合に加入し続けることができる制度です。
1. 保険料の計算方法(原則2倍)
- 原則は2倍
⇒ 在職中は会社と折半だった保険料を、全額自己負担します。そのため、保険料は在職中の約2倍になります - 保険料の上限額
⇒ ただし、保険料の計算には上限額が設定されています。令和7年度の任意継続の標準報酬月額上限は32万円です 。在職中の収入がこれより非常に高かった人は、国民健康保険料よりも任意継続の保険料の方が安くなる可能性があります
2. 任意継続のメリット・デメリット
- メリット
⇒ 扶養家族が多い場合、国民健康保険のように家族の人数分保険料が加算されないため、有利になるケースが多いです - デメリット
⇒ 国民健康保険にあるような、失業や収入減に伴う減免制度は原則としてありません
🔑 ワンポイント
任意継続の申請は「資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内」と非常に短いため、事前の計算が必須です
選択肢2:国民健康保険(国保)の計算方法と「減免制度」
お住まいの市区町村が運営する「国民健康保険」に加入する選択肢です。これが最も一般的な選択肢ですが、最大のワナが潜んでいます。
1. 保険料のワナ:「昨年の所得」で計算される
国民健康保険料は、前年の所得に基づいて計算されます。
- 高額になりがち
⇒ 退職して現在の収入がゼロでも、ハラスメント退職直後は「昨年の高い所得」を基準に保険料が計算されるため、非常に高額になるケースがあります
2. 最大の救済策:「軽減(減免)制度」
しかし、ハラスメントが理由でも、ハローワークで「特定受給資格者」または「特定理由離職者」と認定された場合、前年給与所得を30/100として算定する国保の軽減が適用される可能性があります 。
- 軽減の内容
⇒ 前年の給与所得を「100分の30」として計算してもらえます - 申請が必須
⇒ この制度は自動適用されません 。必ず役所の窓口で「会社都合で退職した」旨を伝え、ハローワークで受け取った「雇用保険受給資格者証」を提示して申請する必要があります
🌈 ちょっと一息
ハラスメント退職の場合、国保の「軽減制度」を使えるかどうかが、どちらが得かの最大の分岐点です
選択肢3:家族の扶養に入る(保険料ゼロ)ための条件
3つの選択肢の中で、保険料の自己負担がゼロになる、金銭的に最も負担が軽い選択肢です。ただし、加入には厳格な収入要件があります。
1. 扶養に入るための収入要件
家族(配偶者や親など)が加入している健康保険の「被扶養者」になるためには、あなたの将来にわたる年収見込みが基準額未満である必要があります。
- 収入の壁
⇒ 原則として、年収見込みが130万円未満(60歳以上等は180万円未満)かつ被保険者の収入の2分の1未満等が目安です - 失業保険との関係
⇒ 基本手当日額が約3,611円を超える支給期間中は、多くの健康保険で被扶養者認定の対象外になります
2. 退職直後でも加入できるか
退職直後でも、退職の事実と将来の収入見込みで判断されます。
- 必要な書類
⇒ 家族の会社に「退職証明書」や「離職票のコピー」を提出し、被扶養者としての認定を申請します
まとめ
今回は、専門家の視点から、退職後に直面する健康保険の3つの選択肢と、どれが得になるかの比較ポイントについて解説しました。
この記事のポイント
- 任意継続は「昨年の収入が非常に高かった人」や「扶養家族が多い人」に有利な場合がある
- 国民健康保険は、ハローワークで「特定受給資格者」等の認定を受ければ、「軽減制度」の申請で大幅に安くなる可能性がある
- 家族の扶養は保険料ゼロだが、年収130万円未満かつ失業保険の日額という厳格な要件がある
任意継続と国保は二重加入できません 。見積りは同時並行で取り、任意継続の申請期限(資格喪失日から20日以内) に注意してください。
必ずお住まいの役所の窓口で国保の正確な見積もり(軽減適用後)をもらい、任意継続の保険料と比較するという具体的な行動を取り、最も負担の少ない選択をしてください。
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