最後の有給は全部取る! 会社に拒否させず損せず辞める全手順

退職が決まったとき
誰もが一度は頭をよぎる不安があります。
「残っている有給休暇を、本当にすべて消化して辞められるのだろうか?」
という疑問です。会社によっては
「立つ鳥跡を濁さずだ。忙しい時期に有給消化なんて非常識だ」
といった精神論や、
「引継ぎが終わらないなら有給は認めない」
という脅しのような言葉で、暗黙のうちに放棄を迫ってくることがあります。
しかし、はっきり申し上げます。退職時の有給消化は、会社からの恩情ではなく、あなたが労働の対価としてすでに得ている「完全な権利」です。
この記事では、会社側の理不尽な引き止めや拒否を封じ、法的にも実務的にも「完璧な形」で、損をせずに有給をすべて消化して退職するための手順を解説します。
なぜ会社は退職時の有給を「拒否」できないのか
会社が従業員の有給取得を拒む際、最大の根拠とするのが「時季変更権」という権利です。
これは「事業の正常な運営を妨げる場合、会社は有給の取得日を変更させることができる」というものです。しかし、退職時にはこの理屈は通用しません。
退職時、会社の「伝家の宝刀」は折れている
時季変更権は、あくまで「日程を変更する権利」であり、「有給を消滅させる権利」ではありません。退職日が確定している場合、その日以降に日程をずらすことは物理的に不可能です。
つまり、退職日まで有給が残っている場合、会社には「変更させる先の日程」が存在しないため、時季変更権を行使することは法的に不可能となります。
- 会社
⇒ 「今は忙しいから時期をずらしてほしい」 - あなた
⇒ 「退職日以降にはずらせません」
この法的ロジックがある以上、会社はあなたの有給申請を拒否することはできません。
「就業規則で退職時の有給消化を禁止している」
と主張されることがありますが、労働基準法は就業規則よりも強いため、そのような規則自体が無効と判断される可能性が高いです。
🔑 ワンポイント
会社が「承認しない」と言っても、有給休暇は労働者が「指定」した時点で成立します。会社の許可が必要な制度ではありません。
最大の壁「引継ぎ」を攻略する先制攻撃
法的に権利があるといっても、実務上の最大の壁となるのが「業務の引継ぎ」です。会社はここぞとばかりに
「責任」
という言葉を使ってきます。ここで重要なのは、会社に文句を言わせないための「既成事実」を作ることです。
逆算スケジュールで「隙」をなくす
退職交渉をする際、あるいは有給を申請する際に、口頭で相談してはいけないんです。必ず
「有給消化を含めた退職スケジュール」
「引継ぎ計画書」
をセットで提示します。
- 退職日を決定
⇒ 会社の規定(1ヶ月前など)を守った日付を設定 - 最終出社日を逆算
⇒ 退職日から有給残日数を引いた日を算出 - 引継ぎ期間を設定
⇒ 今日から最終出社日までの期間で、何を誰に引き継ぐかをリスト化
「この期間ですべての業務を完璧に引き継ぎます。その後の期間は有給休暇を消化させていただきます」と、業務の完了を約束した上で権利を主張してください。ここまで準備された従業員に対して、会社は
「引継ぎができない」
という反論ができなくなります。
🌈 ちょっと一息
引継ぎ相手が決まらないのは会社の責任です。あなたは「マニュアル(手順書)」を作成して残すことで、引継ぎ義務を果たしたと言えます。
証拠を残す「鉄壁の申請」手順
いざ有給を申請する段階で
「言った、言わない」
のトラブルになることを避けるため、すべてのやり取りは記録に残します。
「お願い」ではなく「届出」をする
有給休暇届は、会社所定のフォーマットがあればそれを使用しますが、上司が受け取りを拒否する場合は、内容証明郵便やメールで「通知」を行います。
- 宛先
⇒ 直属の上司および人事担当者 - 内容
⇒ 「〇月〇日から〇月〇日まで、有給休暇を取得し、〇月〇日をもって退職いたします」と明確に記載 - ポイント
⇒ 「取得させていただいてもよろしいでしょうか?」という疑問形ではなく、「取得します」という断定形で伝えること
もし拒否されたら?
万が一、強力に拒否されたり、
「有給分は欠勤扱いにして給料から引く」
などと言われたりした場合は、即座に労働基準監督署へ相談する準備があることを(冷静に)伝えましょう。
「有給消化が認められない場合、労働基準監督署に相談せざるを得なくなりますが、会社としてその対応でよろしいですか?」と確認することは、強烈な抑止力になります。
会社にとって、1人の有給休暇のために労基署の調査が入ることは、あまりにもリスクが大きすぎるからです。
まとめ
有給休暇は、あなたがこれまで会社に貢献し、積み上げてきた「給料の一部」です。これを捨てて退職することは、退職金や最後の給料をドブに捨てることと同じです。
新しい生活を始めるには、お金も、そして何より心身の休息も必要です。「会社のため」ではなく「自分の未来」のために、堂々と権利を行使してください。
あなたが引継ぎの準備さえしっかり行えば、誰もあなたを責めることはできません。
この記事のポイント
- 退職時は「時季変更権」が使えないため、会社は有給消化を拒否できない
- 「引継ぎ計画書」と「消化スケジュール」を先に提示し、会社に反論の隙を与えない
- 有給申請は「お願い」ではなく「届出」として行い、拒否されたら労基署のリスクをちらつかせる
最後の有給は、次のステージへ進むあなたへの、過去のあなたからの贈り物です。遠慮なくすべて受け取って、胸を張って卒業しましょう。
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