休職中のボーナス・昇給はもらえる? 賃金規程の読み方

ハラスメントで休職に入ると
多くの人が健康保険からの「傷病手当金(給与の約2/3)」を受給して生活をつなぎます。 しかし、ふと不安になるのが「会社から支払われるお金」のことです。
「休んでいる間、ボーナス(賞与)はゼロ円になってしまうのか」
「復職したとき、同期に比べて給料(昇給)は置いていかれるのか」
これらの不安は、今後の生活設計(ライフプラン)に直結する切実な問題です。
この記事では、公的制度ではなく、会社のルールによって決まるこれらの扱いについて、賃金規程のどこをチェックすれば真実がわかるのか、具体的な読み解き方を解説します。
ボーナス支給の分かれ道「算定期間」と「在籍要件」
まずボーナス(賞与)ですが、法律上、会社に支払い義務はありません。 支給されるかどうかは、完全に会社の規定次第です。 確認すべき重要キーワードは以下の2つです。
「算定期間」の落とし穴
ボーナスには、必ず「いつからいつまでの働きを評価するか」という「算定対象期間」が設定されています。 (例:冬のボーナスなら「4月1日~9月30日」など)
この期間中に、少しでも出勤していた実績があれば、その期間分は日割り計算などで支給される可能性があります。 逆に言えば、算定期間の全期間を休職していた場合は、支給額がゼロになるのが一般的です。
🔑 ワンポイント
就業規則に「休職期間は算定期間から除外する(=働いていないものとする)」と書かれている場合、その期間分の賞与はカットされます
最も恐ろしい「支給日在籍要件」
もう一つ、絶対に確認が必要なのが「支給日在籍要件」です。 これは、「ボーナス支給日(振込日)に会社に在籍していなければならない」というルールです。
さらに厳しい会社では、「支給日に就業していること(休職中でないこと)」を条件としている場合があります。 この場合、いくら算定期間中にバリバリ働いて成果を出していたとしても、支給日当日に休職中であれば、全額不支給となるリスクがあります。
ただし、これらの厳しいルールが有効となるには、就業規則や賃金規程が従業員に周知(いつでも見られる状態)されていることが大前提となります。
金庫にしまわれて誰にも見せないような規則は、法的に無効となる可能性があるんです。
復職後の給与に関わる「昇給」のリアル
次に昇給(基本給のアップ)です。 多くの日本企業では年1回の定期昇給がありますが、休職中はどのように扱われるのでしょうか。
多くの場合は「据え置き」になる
昇給は通常、過去1年間の「人事評価」に基づいて決定されます。
私傷病(プライベートな病気やケガ)による休職で評価期間の実績がない場合、評価不能として昇給が見送られる(据え置き)ケースが一般的です。
これは「ノーワーク・ノーペイ(働かざる者食うべからず)」の原則に基づくため、直ちに違法とは言えません。
🌈 ちょっと一息
例外として「育児・介護休業法」に基づく休業(育休など)の場合は、休んだことだけを理由に昇給させない等の不利益取扱いは法律で禁止されています
復職後の「不当な減給」には注意
ただし、昇給しないだけでなく、復職後に「休んでいたから」という理由だけで、以前より低い給与(減給)を提示された場合は注意が必要です。
- 適法なケース
⇒ 役職定年や、配置転換により職務内容(責任の重さ)が変わったことに伴う減給 - 違法なケース
⇒ 職務内容は同じなのに、休職したことへの「懲罰」として減給する
後者は、休職制度の利用を理由とした不利益取扱いとして、無効になる可能性があります。
総務に聞く前に「賃金規程」を読もう
これらを人事や総務に直接聞くと、「お金のことばかり気にしている」と誤解されそうで怖いという方も多いでしょう。
そこで、会社のイントラネットやハンドブックにある「賃金規程(または給与規程)」を自分で確認することをおすすめします。
すぐ使える「チェックリスト」
規程集を手に入れたら、以下の項目を重点的にチェックし、スマホで写真を撮るなどして記録に残してください。
- 賞与の「算定期間」
⇒ 評価対象となる期間はいつからいつまでか - 賞与の「受給資格」
⇒ 「支給日に在籍している者」「支給日に就労している者」という文言があるか - 賞与の「日割り・減額」規定
⇒ 「休職期間は控除する」「月割りで支給する」といった計算式があるか - 昇給の「対象外」規定
⇒ 「休職期間中の者は昇給の対象としない」等の記載があるか
まとめ:正確な情報が「生活防衛」の第一歩
「休職=ボーナスゼロ」とは限りませんし、逆に「働いた分は出るはず」と期待していたのにゼロになることもあります。
この記事のポイント
- ボーナスは「算定期間」の勤務実績と、「支給日」の状態(休職中か否か)で決まる
- 厳しい支給条件も、就業規則が従業員に「周知」されていなければ無効の可能性がある
- 昇給は評価不能として「据え置き」になるのが一般的だが、育休等の場合は法的に守られる
重要なのは、憶測で不安になるのではなく、会社のルールを正しく理解し、現実的な収支計画(ライフプラン)を立てることです。
もし規程の閲覧を拒否されたり、記載内容と明らかに違う運用をされたりした場合は、労働基準監督署などの専門家に相談してください。 正しい知識で、生活と療養の基盤を守りましょう。
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