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傷病手当金は退職後ももらえる?「継続給付」3つの条件

傷病手当金は退職後ももらえる?「継続給付」3つの条件
傷病手当金は退職後ももらえる?「継続給付」3つの条件

もう会社に行けない

 「でも辞めたら傷病手当金が止まって生活できなくなる…。」

そんな恐怖で、休職期間満了までしがみつこうとしていませんか?

誤解されがちですが、傷病手当金は条件さえ満たせば、退職後も受給可能なんです。 これを「傷病手当金の継続給付」と呼び、在職中と同じく最長1年6ヶ月まで、生活費の保障を受けながら療養に専念することができます。

ただし、これには厳格な条件があり、一つでも外れると受給権を失ってしまいます。

この記事では、療養に専念しながら生活を守るために絶対にクリアすべき「3つの条件」と、一歩間違えれば受給資格を失う退職日の最大の罠について解説します。

退職後も貰うための「3つの絶対条件」

退職後も傷病手当金を受け続けるためには、健康保険法が定める以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。 一つでも欠ければ、退職した翌日から給付はストップしてしまいます。

条件①:被保険者期間が継続して1年以上あること

退職日(資格喪失日の前日)までに、健康保険に加入していた期間が継続して1年以上あることが必要です。

  • 注意点
    ⇒ 転職して間もない場合でも、前職の健康保険と1日も空かずに繋がっていれば通算できる場合がある(協会けんぽ同士など)
  • 対象外
    ⇒ 国民健康保険や、退職後に加入する任意継続被保険者の期間は、この「1年」には含まれない

自分が1年以上加入しているか不安な場合は、給与明細や健康保険証で資格取得日を必ず確認しましょう。

条件②:退職日に「受給資格」があること

退職日の時点で、すでに傷病手当金を受けているか、または受けられる状態(以下の要件を満たしている)である必要があります。

  • 業務外の病気やケガで療養中である
  • 療養のために働くことができない(労務不能
  • 連続して3日間休んでいる(待期期間の完成

🔑 ワンポイント
実際に手当金が振り込まれていなくても、上記を満たして休んでいれば「受ける権利がある」とみなされ、条件クリアとなります

条件③:退職後も「労務不能」が続いていること

継続給付はあくまで「働けない人」のための救済措置です。 退職後に病気が治って働ける状態になったり、別の会社で働き始めたりした場合は、その時点で支給は終了します。

医師によって「まだ働けない(労務不能)」と診断され続けていることが、給付継続の前提条件となります。

一発アウト! 魔の「退職日の出勤」

ここがこの記事の最重要ポイントです。 3つの条件のうち、最も多くの人が失敗し、後悔するのが「退職日当日の過ごし方」です。

「最後だから」という挨拶が命取り

 「最後くらいはちゃんと挨拶して、引き継ぎもしないと」

その責任感は立派ですが、継続給付においては命取りになります。

もし、退職日当日に出勤して少しでも業務を行ったり、挨拶回りをしたりしてしまうと、健康保険組合にこう判断されるリスクがあります。

「退職日に出勤できたということは、労務可能(働ける状態)に戻ったのですね。では、その日をもって傷病手当金の受給権は消滅します」と。

これにより、翌日以降の継続給付を受け取る権利が永久に消滅してしまうリスクがあるんです。

退職日は必ず「休む」こと

継続給付を確実に受けるための鉄則は、退職日を労務不能の状態で終えることです。 具体的には、以下のいずれかの扱いにしてもらう必要があります。

  1. 有給休暇
    ⇒ 給与は発生するが、労働はしていない状態(傷病手当金は給与分減額されるが、受給権は残る)
  2. 欠勤
    ⇒ 病気療養として休む(最も安全な方法)

会社には「医師の指導により、退職日も療養に専念します」と伝え、絶対に出勤扱いにされないよう念押ししてください。

失業保険との関係と「受給期間延長」手続き

退職後のお金といえば「失業保険(基本手当)」も気になりますが、傷病手当金との関係はどうなるのでしょうか。

「傷病手当金」と「失業保険」は同時にもらえない

この2つは、支給される目的が正反対であるため、併給は不可能です。

  • 傷病手当金
    ⇒ 病気で働けない人の生活を支えるもの
  • 失業保険
    ⇒ 健康で働ける人が、仕事を探す間の生活を支えるもの

「働けない」かつ「働ける」という状態はあり得ないため、どちらか一方しか選べません。 退職直後はまだ働けない状態ですので、まずは傷病手当金を優先して受給します。

🌈 ちょっと一息
大企業健保などで法定額に上乗せされる「付加給付」は、退職後の継続給付ではカットされる(支給されない)場合が多いため、金額の変動に注意が必要です

黄金ルート「受給期間の延長」

では、失業保険は捨てなければならないのでしょうか? いいえ、ハローワークで受給期間の延長という手続きを行えば権利を温存できます。

通常、失業保険は退職から1年以内に受け取らなければなりませんが、申請することで最大4年まで期限を延ばせます。 これにより、以下のような「リレー受給」が可能になります。

  1. 退職後、まずは傷病手当金を最大1年6ヶ月受給して療養する
  2. 病気が治り「働ける」状態になったら、傷病手当金を終了する
  3. ハローワークで延長解除の手続きをし、失業保険を受けながら求職活動をする

まとめ:お金の不安を断ち、療養という「仕事」に専念する

「会社を辞める」ことは、収入を捨てることではありません。 日本の社会保障制度は、働けなくなった人を守るために手厚く設計されています。

この記事のポイント

  • 1年以上の加入期間があれば、退職後も傷病手当金は継続できる可能性がある
  • 退職日に出勤すると「働ける」とみなされ、給付が止まる最大のリスクがある
  • 失業保険は「延長手続き」をして、病気が治った後のために温存する

正しい知識があれば、退職後も毎月の生活費を受け取りながら、焦らずに心を治すことができます。 退職日の出勤だけは絶対に避け、自分を守るための手続きを淡々と進めてください。

今はゆっくり休むことが、あなたにとっての唯一の仕事です。 その先には、必ず元気になって再出発できる日が待っています。

→ 関連ページ:『休職・退職時に使える、あなたの権利「公的支援」完全ガイド』

→ 関連ブログ:『失業保険で損しない「期間の延長」申請の知識とは?』

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