SNSでの「社員の暴露行為」企業はどう対処すべきか

飲食店の不適切動画(いわゆるバイトテロ)や
在職中・退職後の従業員による内部情報の暴露が、SNSを通じて一瞬で拡散し、企業の信用を失墜させる事件が後を絶ちません。
これは他人事ではなく、どの企業にも起こり得る深刻なリスクです。
この記事では最新の動向として、従業員による「暴露行為」に対し、企業が法的にどのような対処(懲戒処分や法的措置)を検討するのか、その根拠と、企業が取るべき具体的な予防策・事後対応のプロセスを解説します。
なぜ暴露行為は「懲戒処分」の対象となるのか
従業員には「表現の自由」がありますが、同時に会社との労働契約に基づき「秘密保持義務」や「誠実義務(会社の信用を毀損しない義務)」を負っています。
SNSでの暴露行為が、就業規則で定められたこれらの義務に違反し、会社の秩序を乱したと判断された場合、懲戒処分(譴責、減給、あるいは懲戒解雇)の対象となる可能性があります(就業規則の根拠と相当性が必要)。
🔑 ワンポイント
処分の重さは「暴露の内容の重大性」や「会社が被った損害の程度」によって総合的に判断されます
ここでは、処分の判断基準となる「暴露の内容」と「会社の損害」の関連性について解説します。
法的措置(損害賠償・名誉毀損)へ進む境界線
懲戒処分だけでは済まないケースもあります。
暴露行為が「営業秘密の侵害」や「取引先の信用を毀損」するなど、会社に具体的な金銭的損害を与えた場合、会社は従業員に対して損害賠償請求(民事)に踏切る可能性があります。
さらに、暴露内容が虚偽であったり、内容が事実であっても公益性が認められなかったりする場合には、「名誉毀損罪」や「信用毀損・業務妨害罪」(刑事)が成立し得る境界線についても注意が必要です。
🌈 ちょっと一息
内部告発が公益通報として保護されるには、対象事実・通報先・通報方法など法定要件の充足が必要です(SNS等への拡散は通常保護外です)
企業が取るべき「予防策」と「事後の対応フロー」
問題が起きてからでは手遅れです。企業が今すぐ取るべき「予防策」は主に以下の点です。
- ソーシャルメディアポリシー(ガイドライン)の策定と周知徹底
- 営業秘密の指定・アクセス権管理、個人データ持出しの技術的対策
- 入社時および退職時の秘密保持に関する誓約書の再確認
- 暴露の引き金となる不満を解決するための「内部通報制度」の活性化
特に重要なのは、従業員が「暴露」という手段に出る前に、社内の窓口に相談できる風通しの良い環境整備です。
また、万が一暴露が発生した際は
- 迅速な事実確認と証拠保全(スクリーンショット、URLの記録など)
- 暴露した従業員の特定とヒアリング
- 対外公表(謝罪や経緯説明)と再発防止策の策定 といった冷静かつ迅速な事後の対応フローが求められます
まとめ:秩序維持と「内部からの解決」が鍵
SNSでの暴露行為は、従業員にとってはキャリアを失う(懲戒解雇や賠償責任)リスクがあり、企業にとっては社会的信用とブランド価値を一瞬で失う、双方にとって破滅的な結果を招きます。
この記事のポイント
- 従業員は秘密保持義務や誠実義務を負っており、暴露は懲戒処分の対象となり得る(就業規則の根拠と相当性が必要)
- 会社に金銭的損害を与えた場合、損害賠償請求(民事)や信用毀損・業務妨害(刑事)に進む可能性がある
- 予防策としてポリシー策定や技術的対策は必須だが、不満を吸い上げる内部通報制度の活性化が最も重要である
企業は「暴露させない」ための明確なルール周知と、不満を安全に吸い上げる公正な内部通報制度の整備が急務です。同時に、従業員も「暴露」という手段の前に、法的に保護されたルート(公益通報)を検討する冷静さが求められます。
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