日本は遅れている? 世界標準「ILO条約」で見るハラスメント

うちの会社の対応、なんか甘くない?
「被害を訴えたのに、『指導の範囲内』と言われて終わってしまった…」
そんなモヤモヤを感じたとき、それはあなたの感覚が間違っているのではなく、日本のルールそのものが「世界標準」から見て少し遅れているからかもしれません。
世界では今、ハラスメントを単なる職場のトラブルではなく、重大な「人権侵害」として厳しく禁じる動きが加速しています。 その中心にあるのが、2019年にILO(国際労働機関)で採択された
「暴力とハラスメント条約(第190号条約)」
です。
この記事では、この「国際標準」を知ることで、日本の現状を客観的に理解し、私たちが目指すべき職場環境のあり方を解説します。
世界の常識「ILO第190号条約」とは
ILO第190号条約は、仕事の世界における暴力とハラスメントを撤廃するための、史上初の国際条約です。 この条約が画期的だったのは、以下の2点において従来の常識を覆したからです。
- ハラスメントは「人権侵害」である
⇒ これまで「労働問題」として扱われがちだったハラスメントを、尊厳を傷つける人権問題として明確に定義しました - 働く「すべての人」を守る
⇒ 正社員だけでなく、契約社員、フリーランス、ボランティア、実習生、そして求職者に至るまで、仕事に関わるすべての人を保護対象としています
🔑 ワンポイント
日本はまだこの条約を批准していませんが、欧州や中南米を中心に批准国が増えており、世界的な大企業ではこの基準を自主的に採用する動きが広まっています
日本と世界の「決定的な差」
では、日本の法律(労働施策総合推進法=いわゆるパワハラ防止法)と、この世界標準にはどのような差があるのでしょうか。 最大の違いは、「禁止」か「措置」かという点です。
- 世界標準(ILO条約など)
⇒ ハラスメント行為そのものを法律で禁止し、加害者への制裁や被害者への補償を重視する傾向があります - 日本の法律
⇒ 企業に対して、ハラスメントを防止するための措置義務(相談窓口を作る、周知するなど)を課すものであり、行為そのものを直接禁止・処罰する規定ではありません
🌈 ちょっと一息
※ILO条約を批准した国であっても、具体的な罰則や救済の方法は各国の国内法に委ねられているため、国によって厳しさには差があります
外圧で変わりゆく日本の職場
「日本は批准していないから関係ない」と思われるかもしれませんが、そうとも言い切れません。
ビジネスのグローバル化に伴い、海外企業と取引する日本企業は、国際的なサプライチェーン(供給網)の中で「人権デュー・デリジェンス(人権への配慮)」を厳しく求められるようになっているからです。
「ハラスメント対策が不十分な企業とは取引しない」
という外圧が、法律以上に日本企業の背中を押し始めています。 これからは、
「日本の法律さえ守っていればいい」
という言い訳は、世界では通用しなくなっていくでしょう。
まとめ:視座を高く持ち、声を上げよう
世界の基準を知ることは、自分の置かれている環境を客観視する「物差し」になります。
もし職場で理不尽な扱いに遭ったとき、
「日本の法律ではこれが限界だから」
と諦める必要はありません。「世界ではこれは人権侵害なんだ」という自信を持って、会社や社会に対して「おかしい」と声を上げていくことが、少しずつ日本の常識を変えていく力になります。
この記事のポイント
- 世界標準(ILO条約)では、ハラスメントは明確に人権侵害と定義されている
- 日本の法律は企業への措置義務にとどまり、行為自体の禁止規定ではない
- 条約未批准でも、国際的なビジネス取引の条件として対策が進む可能性がある
「世界基準」という強力な味方がいることを知るだけで、職場の理不尽に対する見え方が少し変わりませんか? あなたが感じている「辛い」「おかしい」という感情は、決してワガママではなく、世界共通で守られるべき尊厳を求める叫びなんです。
日本の法律が変わるにはまだ時間がかかるかもしれません。しかし、私たち一人ひとりが「それはハラスメントだ」と毅然とした態度を示すことが、確実に社会を動かす一歩になります。自信を持って、あなたらしい働き方を守り抜きましょう。
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