無意識の偏見が元凶? 企業が注力するジェンハラ対策の最前線

近年、セクハラやパワハラと並んで
企業が対策を急いでいるのが「ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)」です。
「男のくせに育休なんて」
「女性にお茶出しを頼むのは当然」
こうした発言は、かつては職場の日常風景だったかもしれません。しかし現在では、性別による役割分担意識の押し付けとして、重大なリスク要因とみなされています。
この記事では、企業研修の現場で起きている変化と、最新のトレンドである「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」への対策について解説します。
「悪気がない」が一番怖い? ジェンハラの正体
ジェンハラは、セクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)とは似て非なるものです。最大の違いは、発言者に
「性的な意図」
があるかどうかではなく、
「性別に基づく固定観念」
があるかどうかにあります。
セクハラとの決定的な違い
一般的に、セクハラは相手の意に反する性的な言動を指しますが、ジェンハラは「男らしさ・女らしさ」という価値観の強要を指します。
- セクハラ
⇒ 下ネタ、身体的接触、性的な関係の強要など - ジェンハラ
⇒ 「男は仕事、女は家庭」「女性ならではの気配り」「男なら泣くな」といった発言
善意の皮を被ったハラスメント
ジェンハラが厄介なのは、発言者が「良かれと思って」言っているケースが多い点です。
「女性には重い荷物を持たせない(女性は弱いものだから)」
「男性には大きなプロジェクトを任せる(男性は大黒柱だから)」
といった配慮も、受け手にとっては
「能力を正当に評価されていない」
「性別で決めつけられている」
という不満につながりかねません。
トレンドは「アンコンシャス・バイアス」への気づき
従来のハラスメント研修は、
「これを言ってはいけない」
というNGワードの暗記が中心でした。しかし、最新の研修トレンドは大きく様変わりしています。
禁止リストよりも「自分のメガネ」を知る
現在の企業研修で最も注力されているのが、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)へのアプローチです。 これは、
「誰の心にも偏見はある」
という前提に立ち、自分の中にある「当たり前」を疑うトレーニングです。
- 従来の研修
⇒ 「『男のくせに』と言ってはいけません」(ルールの学習) - 最新の研修
⇒ 「なぜ『男なら残業できる』と思い込んだのか?」(思考の癖への気づき)
🔑 ワンポイント
「自分は差別なんてしない」と信じている人ほど、無意識の偏見に気づきにくく、知らぬ間に加害者になってしまうリスクが高いとされています
多様性が組織を強くする
この変化の背景には、ダイバーシティ(多様性)の推進があります。
性別役割分担にとらわれない組織は、優秀な人材が定着しやすく、イノベーションが生まれやすいという経営的なメリットが明確になってきたため、企業はこぞって「意識改革」に予算を投じているんです。
SOGIハラ対策への広がりと今後の課題
ジェンハラ対策は、LGBTQ+など性的指向・性自認に関するハラスメント(SOGIハラ)の防止とも密接に関わっています。
「らしさ」の呪縛からの解放
「男らしく・女らしく」という圧力は、トランスジェンダーなどの性的マイノリティの当事者を深く傷つけるだけでなく、すべての従業員にとって
「自分らしく働くこと」
を阻害する要因になります。
最新の研修では、性別だけでなく、年齢、国籍、雇用形態など、あらゆる属性に対するバイアスを取り除き、心理的安全性の高い職場を作ることがゴールに設定されています。
まとめ:常識のアップデートは必須スキル
「昔はこれが普通だった」
という言い訳は、もはや通用しません。アップデートされない古い価値観を持ち続けることは、企業にとっても個人にとっても、致命的なリスクになりつつあります。
この記事のポイント
- ジェンハラは性的意図ではなく固定的性別役割分担の押し付けである
- 最新の研修はNGワード暗記よりアンコンシャス・バイアスの自覚を重視
- 「らしさ」の強要をやめることは、すべての人の働きやすさに直結する
まずは、自分の発言の裏に「男だから」「女だから」という決めつけが潜んでいないか、一度立ち止まって考えてみることが大切です。
無意識の偏見に気づき、それを手放すことは、決して窮屈なことではありません。むしろ、「こうあるべき」という縛りからあなた自身を解放し、より自由で快適な人間関係を築くための第一歩となるはずです。
→ 関連ページ:『ハラスメントの正体 ―敵の姿を正確に知る―』へ
→ 関連ブログ:『「SOGIハラ」って何?知らずに加害者になる前に』へ

