施行から約11ヶ月 フリーランス保護新法 3つの重要ポイント

「クライアントからの突然の契約解除」
「理不尽な報酬の減額」
「ハラスメント的な言動」…。
フリーランスやギグワーカーとして働く中で、このようなトラブルに直面し、弱い立場から泣き寝入りした経験はありませんか。
実は、こうした状況を改善するため、2024年11月1日に「フリーランス保護新法」が施行されています。
施行から約11ヶ月が経過した今、この法律があなたの働き方をどう守ってくれるのか、全てのフリーランスが知っておくべき3つの重要ポイントに絞って、徹底解説します。
重要ポイント①:誰が、誰から「保護」されるの?
まず最も大切なのは、この法律が「誰」を保護するためのものなのかを正しく理解することです。
保護の対象となる「特定受託事業者」とは
法律では、保護されるフリーランスを「特定受託事業者」と呼んでいます。難しく聞こえますが、要するに以下のような働き方をしている方が対象です。
- 従業員を雇用していない
- 法人(会社)または個人事業主
具体的には、ITエンジニア、Webデザイナー、ライター、コンサルタント、イラストレーターなど、多くのフリーランスがこれに該当します。
義務を負う「特定業務委託事業者」とは
一方、法律上の義務を負うクライアント側は「特定業務委託事業者」と呼ばれます。こちらはシンプルに、
- 従業員を雇用している
- フリーランスに業務を委託する法人または個人
と定義されています。
つまり、あなたが従業員のいないフリーランスで、従業員のいる会社から仕事を受けている場合、この法律による保護の対象になる可能性が非常に高い、ということです。
重要ポイント②:契約とお金のトラブルを防ぐ「取引のルール」
フリーランスにとって永遠の悩みともいえる、契約や報酬に関するトラブル。この法律では、下請法のように、発注者(クライアント)に対して取引の公正化を求める、以下のような具体的なルールを定めています。
- 契約条件の明示義務
⇒ これまでは曖昧にされがちだった契約内容について、発注者は業務内容、報酬額、支払日などを書面やメールで明示することが義務付けられました。「言った言わない」のトラブルを防ぐための大きな一歩です。 - 60日以内の報酬支払い
⇒ 発注者は、フリーランスから納品物を受け取った日から60日以内に報酬を支払わなければなりません。これにより、不当な支払い遅延を防ぐことができます。 - 一方的な減額や受領拒否の禁止
⇒ 発注者側の都合で、フリーランスに責任がないにもかかわらず、一方的に報酬を減額したり、納品物の受け取りを拒否したりすることは原則禁止されました。 - 長期契約の中途解除予告
⇒ 一定期間以上の継続的な契約(例 ⇒ 6ヶ月以上)を途中で解除する場合、発注者は原則として30日前までに予告する必要があります。これにより、突然の契約打ち切りというリスクが軽減されます。
重要ポイント③:パワハラ・セクハラも対象。「就業環境のルール」
そして、この法律の最も画期的な点ともいえるのが、取引だけでなく「就業環境」についてもルールが定められたことです。
これにより、これまで孤立しがちだったフリーランスが、従業員に近い形で保護される道が開かれました。
ハラスメント相談体制の整備義務
発注者は、フリーランスからのパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの相談に対応するため、相談窓口の設置といった体制を整備することが義務付けられました。
これは非常に重要です。クライアントの担当者から高圧的な言動や無理難題を押し付けられた場合でも、その会社の正式な窓口に相談できる権利が、法律で保障されたのです。
🔑 ワンポイント
クライアントの担当者から受けるパワハラも、もう一人で抱え込む必要はないんです
育児・介護などへの配慮義務
フリーランスが育児や介護と仕事を両立できるよう、発注者は納期や稼働時間について相談があった場合に、配慮することが義務付けられました。これにより、ライフステージの変化に対応した働き方がしやすくなります。
まとめ
今回は、「フリーランス保護新法」について、特に重要な3つのポイントを解説しました。
- 保護対象
⇒ 従業員のいないフリーランスの多くが対象になる - 取引ルール
⇒ 契約の明示化や60日以内の支払いが義務化された - 環境ルール
⇒ クライアント側にハラスメント相談体制の整備が義務化された
この法律は、フリーランスにとって自らを守るための強力な「盾」となります。
施行から約11ヶ月、まだ世間での認知度は十分とは言えませんが、法律を知っているか否かで、クライアントとの向き合い方は大きく変わるはずです。
自分の権利を正しく理解し、安心して働くための第一歩として、この法律の存在をぜひ覚えておいてください。
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