何をやってもダメ… ハラスメントで失った「自信」の回復法

自分は何をやってもダメな人間だ
「どうせ私なんて、どこへ行っても通用しない…」
ハラスメントを受けた後、このような無力感に襲われ、どうしても自信が持てなくなることがあります。頭では「会社が悪かった」と分かっていても、心の奥底で自分を責めてしまう…。
これは、心理学で「学習性無力感」と呼ばれる状態で、長期にわたる攻撃によって心が負った深い怪我のようなものです。
この記事では、砕かれてしまった自己肯定感を、無理なくゼロから育て直すための具体的なステップを解説します。これは、あなたの性格の問題ではなく、正しいケアが必要な傷なんです。
なぜ、自信は消えてしまったのか
まず、なぜここまで自信を失ってしまったのか、その仕組みを知るだけで心は少し軽くなります。ハラスメント加害者は、相手をコントロールするために、徹底的に人格を否定し、能力を貶める言葉を浴びせ続けます。
加害者の声を「自分の声」だと誤解している
毎日否定され続けると、脳はその言葉を事実として学習してしまいます。その結果、加害者がいない場所でも、あなたの頭の中で加害者の言葉がリピート再生され続けます。
- 事実
⇒ あなたは環境が合わなかっただけ - 脳の誤解
⇒ 「お前は無能だ」という加害者の言葉を、自分の評価として受け入れている
いまあなたが感じている「自分はダメだ」という感覚は、あなた本来の心の声ではありません。外部から植え付けられた異物です。まずは
「これは私の本心ではない」
と切り分けることから始めましょう。
🔑 ワンポイント
自分を責める言葉が浮かんだら、「あ、これはあの上司の口癖だな」と客観的にラベルを貼ってみてください。
回復期にやってはいけない「ポジティブ思考」
自信を取り戻そうとして、多くの人が陥る罠があります。それは、無理に前向きになろうとすることです。
「早く元気にならなきゃ」
「ポジティブに考えなきゃ」
という焦りは、かえって逆効果になります。
今は「マイナス」を認める時
自己肯定感が底にある状態で無理にポジティブを目指すと、
「前向きになれない自分」
に対してさらにダメ出しをしてしまいます。
回復の第一歩は、ポジティブになることではなく、自己受容(今の自分を認めること)です。
「今は自信がなくて当たり前だ」
「それだけ深く傷ついたんだから、休んでいいんだ」
そうやって、マイナスの感情を否定せずに、ただそこに置いてあげるだけで十分です。
「考える」より「動く」で心を育てる
失った自信(自己肯定感)は、頭の中で考えていても戻ってきません。脳に「自分はできる」という感覚を思い出させるには、小さな達成体験を積むことが、回復を助ける大きな力になります。
仕事以外の「できた!」を積み重ねる
仕事で失った自信を、いきなり仕事で取り戻そうとするのはハードルが高すぎます。まずは、評価や成果とは無関係な、日常の小さな動作から始めます。
- 料理を作る
⇒ 手順通りに作って美味しく食べる - 散歩をする
⇒ 「ここまで歩こう」と決めて、実行する - 部屋の一角を掃除する
⇒ 自分の手で環境がきれいになるのを見る
これらは、
「自分で決めて、自分で実行し、結果が出た」
というプロセスを含んでいます。この、自分でコントロールできたという感覚の積み重ねが、学習性無力感を打ち消し、やがて仕事や人生に対する自信へと繋がっていきます。
🌈 ちょっと一息
「朝起きられた」「ご飯を食べた」。そんな当たり前のことでも、うつ状態に近い回復期には立派な「達成」です。自分を褒めてあげてください。
まとめ
ハラスメントによって壊された自己肯定感は、一朝一夕には戻りません。骨折のリハビリと同じように、少しずつ、焦らずに機能を回復させていくものです。
昨日の自分より、少しだけ深く眠れた。少しだけご飯が美味しかった。そんな「生存できた事実」に目を向けてください。
他人の評価軸で生きる必要はもうありません。あなたは、ただそこにいるだけで、十分に価値がある存在なんです。
この記事のポイント
- 自信喪失は「性格」ではなく、攻撃によって作られた「学習性無力感」という怪我
- 無理なポジティブ思考は捨て、傷ついている自分をそのまま認める(自己受容)
- 料理や散歩など、仕事以外の小さな「達成体験」で、脳にコントロール感を取り戻す
失った自信は、必ずまた育て直すことができます。焦らず、まずは「今日の自分」を大切にすることから始めましょう。もし辛さが続く時は、一人で抱えず専門家(心療内科やカウンセラー)を頼ってください。
→ 関連ページ:『失った自信を取り戻す。自分の「価値」再発見ワーク』へ
→ 関連ブログ:『「自分が悪い」 罪悪感を手放す3つの思考法』へ

