ストレスを溜めない「完璧主義」との向き合い方

「常に完璧でなければならない」
「少しのミスも許せない」
完璧主義の特性(真面目、責任感が強い)は、ハラスメント下のような強いストレス状況によって、さらに強まりやすいことがあります。その特性が、知らず知らずのうちにストレスを増幅させる原因になってはいませんか?
完璧主義は決して悪いことではありませんが、時として自分を過度に追い詰める「思考のクセ」にもなります。
この記事では、「完璧主義」を無理にやめるのではなく、ストレスを溜めずに「完璧主義」と上手に付き合っていくための具体的な向き合い方を解説します。
なぜ完璧主義はストレスを溜めるのか?「全か無か」の思考ワナ
完璧主義がストレスを溜める最大の理由は、「100点でなければ0点」と考える「全か無か思考」にあります。これは認知行動療法(CBT)でも「認知の歪み」の一つとして知られています。
1. 「100点以外は0点」という思考のワナ
- 極端な自己評価
⇒ 90点の成果を出しても、「できなかった10点」に注目し、自分を「0点」と評価してしまいます - 自己否定への直結
⇒ この思考法は、ハラスメントに直面した際に「自分が悪い」「自分の対応が完璧ではなかったからだ」という過剰な自己否定や罪悪感に直結しやすいのです
2. 過剰な責任感とストレスの蓄積
- 責任の抱え込み
⇒ 「自分がやらなければ完璧にならない」と思い込み、他者に頼れず一人で業務を抱え込みます - ストレスの慢性化
⇒ 常に100点を目指すため、心身が休まらず、慢性的な緊張状態が続くことになります
🔑 ワンポイント
完璧主義によるストレスは、「全か無か」という極端な思考のクセから生まれます
思考法1:「100点」を目指さない「80点主義」のすすめ
完璧主義の思考を和らげる最初のステップは、「完璧(100点)」を目指すのではなく、「合格ライン(80点)」を意識的に設定することです。これは、過度な基準を緩める認知の再評価に近い実践です。
1. 「80点=合格」という基準を持つ
- 合格ラインの設定
⇒ 仕事や家事において、「ここまでできれば十分合格だ」という80点のラインを自分の中で決めます - 力の抜きどころを知る
⇒ すべての物事に100%の力を注ぐのではなく、重要度に応じて力を抜く部分を意識的に作ります
2. 「完了させること」をゴールにする
100点の品質を目指すあまり、タスクが終わらずにストレスを溜めるのは本末転倒です。
- 「完了」こそが成果
⇒ 完璧な仕上がりでなくても、「終わらせたこと」自体をゴールとして設定します - 自己評価の修正
⇒ 「80点で終わらせることができた自分は優秀だ」と、評価の基準を修正します
🌈 ちょっと一息
「80点主義」は「手抜き」ではありません。持続可能なエネルギー配分のための賢い戦略です
思考法2:「減点法」から「加点法」へ。自己肯定感を育てる練習
完璧主義者は、自分の「できなかったこと」に注目する「減点法」で自己評価しがちです。これを、「今日できたこと」に注目する「加点法」に切り替える練習をしましょう。
1. 「減点法」のワナに気づく
- 減点法の思考
⇒ 「今日はAとBとCをやる予定だったのに、Cができなかった。ダメだ」(マイナス評価) - 自己肯定感の低下
⇒ この思考法は、自己肯定感を著しく低下させ、ストレス耐性を弱めます
2. 「加点法」で自己評価する練習
これは、抑うつの改善にも用いられる行動活性化(BA)の考え方に近いものです。
- 加点法の思考
⇒ 「今日はAとBができた。それだけで十分だ」(プラス評価) - 小さな「できた」を数える
⇒ 「朝起きられた」「散歩に行けた」「メールを1通返した」など、どんなに小さな「できた」でも、それを意識的に数えて評価します
3. 「完璧ではない自分」を許す
「加点法」は、完璧ではない自分を受け入れ、許すための訓練(セルフ・コンパッション)です。
- 自己受容
⇒ 「80点だったけれど、よく頑張った」と、自分自身に温かい言葉をかけることを習慣にします
まとめ
今回は、ハラスメント下で強まりやすい「完璧主義」の特性と、ストレスを溜めずに向き合うための思考法について解説しました。
この記事のポイント
- 完璧主義のストレスは「100点でなければ0点」という「全か無か思考」から生まれる
- 「80点主義」を取り入れ、「完璧」ではなく「完了」をゴールにする意識を持つ
- 「できなかったこと」を探す「減点法」をやめ、「できたこと」を数える「加点法」で自己肯定感を育てる
完璧主義は、あなたの長所でもありますが、使い方を間違えるとストレスの原因にもなる諸刃の剣です。「完璧ではない自分」を許し、自分を追い詰めない思考法を身につけることが、心の安定を取り戻す第一歩です。
※「80点主義」は認知の再評価や行動活性化に、「加点法」は自己肯定感やセルフ・コンパッション研究で支持される、実践的な心の技法です。
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