「Z世代の新人」を追い詰める 新しい職場いじめ とは?

2025年、社会人としてのキャリアをスタートさせた
Z世代の若者たちが、これまでにない新しい形の「職場いじめ」に直面しています。
それは、かつてのような露骨な暴力や暴言ではありません。
むしろ、上司や先輩が「良かれと思って」やっている指導やコミュニケーションが、Z世代の若者たちを精神的に追い詰めてしまっている状況が生まれています。
悪意が見えにくいため問題として表面化しにくく、当事者である若者も「自分が未熟なだけかも」と一人で抱え込んでしまいがちです。
今、職場で何が起きているのでしょうか。あなた自身や周りの人が感じている違和感の正体を一緒に見つめ直してみませんか。
「価値観の押し付け」という名の見えないいじめ
現代の職場で起きている新しいいじめの根底にあるのは、上司・先輩世代とZ世代との間にある、働き方やコミュニケーションに対する「常識」のズレなんです。
「よかれと思って」の言動が、結果的に相手を傷つける行為になってしまう事例が増えています。
職場でよく見られる3つのパターン
① 「飲み会は当たり前」という同調圧力
上司世代が「親睦を深めるため」と考える業務時間外の飲み会が、Z世代にとっては大きな苦痛になっているケースです。
プライベートな時間を重視し、仕事とプライベートを明確に分けたいと考える若者に対し、「付き合いが悪い」と低い評価を下したり、不参加を非難したりする行為がこれにあたります。
Z世代は「コスパ」「タイパ」を重視する現実主義的な世代。SNSを通じて多様な価値観に触れてきた彼らにとって、一律の参加を求められることは、個人の尊重とは真逆の行為と感じられるのかもしれません。
② SNSでの過剰な干渉
業務上の必要がないにも関わらず、新人のプライベートなSNSアカウントを探し出し、フォローを申請したり、投稿にコメントしたりする行為です。
Z世代にとってSNSはプライベートな空間であり、そこに上司が踏み込んでくることは、四六時中監視されているような大きなストレスを感じるリスクがあります。
③ 「見て学べ」という指導の放棄
「仕事は先輩の背中を見て覚えるものだ」という旧来の価値観も、Z世代を苦しめる一因です。明確な指示や体系的な研修を求める彼らに対し、具体的な指導をせずに放置することは、不安と孤立感を深めさせる結果につながってしまいます。
🔑 ワンポイント
これらの行為は、上司や先輩に悪意がない場合がほとんどだからこそ、根が深い問題です
なぜZ世代がターゲットになりやすいのか?
では、なぜこのような世代間のすれ違いが起きてしまうのでしょうか。その原因は、働き方やコミュニケーションに対する根本的な価値観の違いにあります。
働き方に対する価値観の大きなギャップ
会社への帰属意識や終身雇用を前提としてきた世代と、個人の成長やキャリアアップ、ワークライフバランスを重視するZ世代とでは、仕事に求めるものが根本的に異なります。
上司世代の価値観
- 会社への貢献を最優先に考える
- 「24時間働けますか?」の世代
- チームの結束を重視する
Z世代の価値観
- ワークライフバランスを重視する
- 個人の成長とキャリアアップを求める
- 多様性と個人の尊重を大切にする
この違いから、定時で帰り、プライベートを優先する若者の姿が「やる気がない」と映ってしまうことがあります。
コミュニケーションスタイルの決定的な違い
電話や対面での「すり合わせ」を重視してきた世代と、チャットなどのテキストベースで、必要な情報を効率的にやり取りすることを好むZ世代。このコミュニケーションスタイルの違いも、誤解を生む大きな要因です。
よくある認識のズレ
- 「報連相がない」と嘆く上司 VS 「テキストで報告済みです」と考える部下
- 「コミュニケーション不足」と感じる管理職 VS 「効率的にやりとりしている」と思うZ世代
ハラスメントに対する意識の差
Z世代は「人に優しい、社会に優しい」ことを前提とした価値観で育ってきた世代です。そのため、従来は「指導」や「コミュニケーション」とされていた行為についても、相手の人格を尊重しない内容であれば、ハラスメントとして認識する傾向があります。
一方で、上司世代は「自分もこうやって育てられた」という経験から、同じ方法で指導しようとして、結果的にギャップが生まれてしまいます。
世代間ギャップを乗り越えるための現実的な解決策
この問題は、どちらか一方が悪いという話ではありません。お互いの価値観を理解し、双方が歩み寄ることが、解決の第一歩となります。
企業・管理職に求められる意識改革
組織として取り組むべき対策があります。
研修とルールの明確化
- アンコンシャス・バイアス研修の実施
⇒ 「こうあるべきだ」という無意識の思い込みに気づく研修を行う - コミュニケーションルールの明確化
⇒ 報告の手段や時間外連絡のルールなどを明確に定める - ハラスメント防止研修の充実
⇒ 世代間の価値観の違いを理解する内容を盛り込む
個別対応の充実
- 1on1ミーティングの導入
⇒ 部下の価値観やキャリアプランを理解し、個性に合わせた指導を行う - 多様なコミュニケーション手段の容認
⇒ テキストベースでの報告も正式な手段として認める - 働き方の多様性を認める
⇒ 定時退社やプライベート重視の姿勢を否定しない
Z世代にできること
一方で、若手従業員側にもできることがあります。
相互理解への努力
- 背景を理解しようと努める
⇒ 上司の言動の背景にある価値観を理解しようと試みる - 自分の考えを丁寧に伝える
⇒ 「飲み会は苦手ですが、ランチならぜひご一緒したいです」など、代案を添えて自分の考えを伝える - 建設的な提案をする
⇒ 単に拒否するのではなく、より良い方法を提案する姿勢を持つ
職場での実践的なアプローチ
- 感謝の気持ちを言葉で表現する
⇒ 上司の配慮に対して、しっかりと感謝を伝える - 自分なりの成果や取り組みを可視化する
⇒ 定時退社でも、しっかりと成果を出していることをアピールする - 世代間の橋渡し役を意識する
⇒ 同世代の悩みを上司に伝える役割を担う
🌈 ちょっと一息
世代間の違いは対立の火種ではなく、新しい価値を生むきっかけにもなり得ます
まとめ
現代の職場では、価値観の押し付けが新しいハラスメントとして認識される時代に入っています。Z世代が直面している新しい職場いじめの実態は、従来の指導方法と現代の若者の価値観とのギャップから生まれているものなんです。
飲み会への参加強要、SNSでの過剰な干渉、明確な指導の放棄など、「良かれと思って」行われる行為が、結果的にZ世代を精神的に追い詰めています。この問題の解決には、企業や管理職の意識改革と、若手従業員側からの丁寧な意思表示の両方が不可欠です。
もしあなたが今、職場で「自分の感覚がおかしいのかな?」と悩んでいるなら、それはあなただけのせいではないかもしれません。世代間の「常識」の違いが、あなたを苦しめている可能性があるのです。一人で抱え込まず、信頼できる同僚や社内外の相談窓口に、今の気持ちを話してみてくださいね。
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