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育児介護の「業務時間外の電話」はなぜハラスメントなのか?

育児介護の「業務時間外の電話」はなぜハラスメントなのか?
育児介護の「業務時間外の電話」はなぜハラスメントなのか?

育児や介護による休業中や時短勤務中に

会社から業務時間外に何度も電話がかかってきて、心休まる時間が奪われる…。

これは単なる「連絡ミス」ではなく、あなたの育児や介護に専念する権利を侵害し、休養を妨げるハラスメントと認められる可能性のある行為です。

特に、育児介護休業法で保護された従業員に対する業務外の連絡は、ケアハラやパタハラとして問題になる可能性が高いんです。

この記事では、業務時間外の連絡がなぜハラスメントとなるのか、その法的・倫理的な論点を解説します。あなたの心身と家族を守るため、会社に対し毅然とした態度で対処する方法を学びましょう。

「業務外の電話」が育児・介護をどう妨げるか

育児や介護をしている従業員に対し、業務時間外や休業中に連絡を取ることは、法律で保護された「休業する権利」の侵害につながるおそれがあります。

1. 育児・介護の権利を侵害するおそれ

育児・介護休業法(正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)は、従業員が子どもの世話や家族の介護に専念できるよう、休業や時間短縮などの措置を講じることを定めています。

  • 休養権の侵害
    ⇒ 業務時間外の連絡は、休養やケアに集中すべき時間を奪い、心身の疲弊を招きます
  • 精神疾患リスク
    ⇒ 常に仕事に引き戻されるプレッシャーは、燃え尽き症候群や精神疾患につながるリスクを高めます
  • 家庭への影響
    ⇒ ケアや育児の中断は、家庭内の負担やストレスを増大させるおそれがあります

2. リモハラ・ケアハラとしての問題点

厚生労働省は、育児や介護に関する制度利用者への嫌がらせや不利益な取扱いを「ハラスメントの一種」と明確に位置づけています。

連絡が度を過ぎた場合、リモートハラスメント(リモハラ)や、育児・介護を理由としたハラスメント(ケアハラ、パタハラ)に該当する可能性があります。

  • 業務の必要性の欠如
    ⇒ 緊急性のない連絡や、メールで済むような内容の執拗な電話は、業務の必要性を超えています
  • 個別事情の無視
    ⇒ 育児や介護は個別の事情への配慮が不可欠です。それを無視する行為は、ハラスメントの要因となります

🔑 ワンポイント
育児や介護中の連絡は、一般的な従業員への連絡よりも、より深刻なハラスメントと認められうる可能性があります

会社が負う「不利益取扱いの禁止」と法的根拠

育児介護休業法には、従業員が育児・介護休業などを取得したことを理由に、不利益な取り扱いをすることを明確に禁止する規定があります。業務時間外の連絡も、この禁止規定に抵触する可能性が高いです。

1. 法で守られた「不利益取扱いの禁止」

会社は、従業員が育児や介護に関する制度を利用したことを理由に、降格や解雇といった不利益な扱いをしてはいけません。

  • 権利行使の妨害
    ⇒ 業務時間外の過度な連絡は、労働者休業の権利行使を妨害する行為と判断される可能性があります
  • 配慮義務の違反
    ⇒ 会社が個別の事情に配慮する義務を怠ったと判断される可能性があります

2. 会社が事前にすべき「配慮」と「ルール」

ハラスメントを防ぐため、会社側は事前に以下のルールを明確にし、従業員と合意しておくべきです。

  • 緊急時の連絡手段の明確化
    ⇒ 緊急時のみ使用する連絡手段や担当者を事前に決めておく
  • 業務の引き継ぎの徹底
    ⇒ 休業に入る前に、業務の引き継ぎを徹底し、業務時間外の連絡が不要な体制を構築する

🌈 ちょっと一息
育児介護中の過度な連絡は、法的に見て不利益な取扱いと評価される可能性があります

連絡を断ち、自分の権利を守る「毅然とした対処法」

業務時間外の連絡に対し、感情的になったり、無視したりするのではなく、法的な根拠に基づいて冷静かつ毅然とした態度で臨むことが、あなたの権利を守るための最も効果的な方法です。

1. 事前にルールを文書化する

休業に入る前や、時短勤務が始まる前に、上司に対し書面やメールで以下のルールを伝えておきましょう。

  • 連絡を断る旨の明記
    ⇒ 「育児・介護に専念するため、業務時間外の連絡は原則としてお控えください」と明確に伝えます
  • 緊急時の定義を共有
    ⇒ 「人命に関わるレベル」など、会社側にとって本当に連絡が必要な緊急事態の定義を共有します

2. 連絡が来た際の冷静な対処

ルールを伝えたにもかかわらず連絡が来た場合、感情的にならず、以下の対応を取ってください。

  • 記録の保持
    ⇒ 連絡が来た日時、回数、内容を詳細に記録します
  • 法的な根拠を提示
    ⇒ 「育児介護休業法に基づく不利益取扱いの禁止に抵触する可能性があります」と冷静に伝えます

3. 社外の相談窓口を利用する

会社側が改善しない場合、社外の専門機関に助けを求めます。

社内にハラスメント相談窓口がある場合は、まず社内手続を経ておくと記録が残りやすく、労働局への申告時にも有利です。

  • 労働局の相談コーナー
    ⇒ 育児介護休業法違反の可能性を指摘し、会社への助言や指導を求めます
  • 弁護士への相談
    ⇒ ハラスメントによる損害賠償請求や、労働審判の準備を進めます

まとめ

今回は、育児・介護中の従業員に対する業務時間外の電話が、なぜハラスメントと認められうるのかを解説しました。

この記事のポイント

  • 業務時間外の連絡は、育児介護休業法で保護された休養の権利を侵害するおそれがある
  • 会社は、権利行使を理由とした不利益な取り扱いをすることが禁じられている
  • 連絡が来た際は、記録を取り、法的な根拠を示して毅然と連絡を断ち切る対処法が有効である

育児や介護は、あなたが持つ大切な権利です。会社からの不当な圧力に負けず、あなたの労働者としての権利と、家族との大切な時間を守り抜きましょう。

→ 関連ページ:『法律という名の盾。あなたを守る法律の限界と可能性』

→ 関連ブログ:『リモートから「原則出社」へ。その命令、ハラスメント?』

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