SHARE:

復職しても再発する? 精神科医が教える「成功率」の真実

復職しても再発する? 精神科医が教える「成功率」の真実
復職しても再発する? 精神科医が教える「成功率」の真実
【専門家の知見を解説】

「早く職場に戻らなければ居場所がなくなる」と思い込み、不安や焦りを抱えたまま、準備不足で無理に復職を急ごうとしていませんか?

先生、もう家では元気になったので、来月から復職させてください

診察室でそう訴える患者さんに、医師は慎重になります。

早く職場に戻りたいという焦りは痛いほど分かります。しかし、適応障害は「ストレス因子から離れれば回復しやすい」一方で、「同じ環境に戻れば容易に再発する」という特徴を持つ病気だからです。

復職をゴールにしてしまうと、数ヶ月後にまた休職することになりかねません。 この記事では、精神科医の視点から、復職が「うまくいくケース」と「失敗してしまうケース」の決定的な違いについて解説します。

データで見る復職の現実

 「復職成功率」

という言葉を聞くと、皆さんは

 「どれくらいの人が職場に戻れたか」

をイメージするかもしれません。一般的に、休職からの復帰率自体は約8割前後と高い数字が出ています。

しかし、専門家が見ているのはそこではありません。重要なのは「復職後の再休職率(再発率)」です。 ある調査では、メンタルヘルス不調で復職した人の約半数が、5年以内に再び病休を取得しているという厳しいデータもあります。

この数字が示唆するのは、「本人の症状が治ったかどうか」以上に、「戻る場所の環境(ストレッサー)が変わったかどうか」が、成功率を左右する最大の要因であるという事実です。

🔑 ワンポイント
適応障害の場合、薬で症状が消えても、職場環境や業務負荷という『原因』がそのままであれば、再発するのは医学的に見て当然の帰結です

復職がうまくいく人の3つの条件

では、再発せずに安定して働き続けられる人には、どのような共通点があるのでしょうか。現場の実感として、以下の3つの条件が整っているケースは成功率が高いです。

  • 「通勤と同等」の生活リズムがある
    ⇒ 朝決まった時間に起き、図書館に通うなどして、週5日・日中活動できる体力が戻っていること。家で元気なだけでは不十分です
  • 自分の「取扱説明書」ができている
    ⇒ 自分が何にストレスを感じやすく、どうなったら危険信号なのか(認知の癖)を理解し、再発防止策を言語化できていること
  • 環境調整の約束が取れている
    ⇒ 会社側と交渉し、配置転換や業務量の軽減、残業禁止などの配慮事項が具体的かつ書面などで合意されていること

🌈 ちょっと一息
いきなりフルタイムで戻るのではなく、リワークプログラム(復職支援)を利用したり、午前中勤務から始める『慣らし勤務』制度を活用したりすることも非常に有効です

「戻らない」という選択も成功の一つ

時に、主治医として復職診断書を書かない、あるいは「その職場への復帰は勧められない」と医師が伝えることがあります。 それは、あなたの努力不足ではありません。

適応障害は、特定の環境に対するアレルギー反応のような側面があります。どれだけ治療しても、その職場環境自体があなたの体質に合わない「アレルゲン」である場合、戻ることは自傷行為になりかねません。

無理に戻って心を壊すより、環境を変える(転職する)ことで驚くほど元気に活躍できるケースが見られます。

 「今の職場に戻らない」

という決断も、あなたの人生においては立派な「治療的成功」なんです。

まとめ:ゴールは「戻ること」ではなく「再発しないこと」

復職に向けた焦りは禁物です。 不完全な状態で丸腰のまま戦場に戻るのは、一番のリスクです。

主治医とよく相談し、自分の心を守るための「防具(再発防止策)」を身につけ、さらに会社というフィールドの「地形(環境)」を調整してもらう。それができて初めて、復職のスタートラインに立てると考えてください。

この記事のポイント

  • 適応障害は環境依存性が高いため、本人の回復と同じくらい環境調整が重要
  • 復職成功の鍵は、通勤と同等の生活リズムと具体的な再発防止策の有無
  • 元の職場に戻ることが全てではない。環境を変えることも適応の一つである

「急がば回れ」という言葉は、メンタルヘルスの回復においてこそ真実です。焦って不十分なまま復帰し、再発してしまうことほど、あなたのキャリアと自信を傷つけるものはありません。

まずはしっかりと「休むこと」も仕事の一部だと割り切り、エネルギーを充電してください。

長い人生の中で、今の数ヶ月や一年はほんの「踊り場」に過ぎません。この期間を、単なる停滞ではなく、より自分らしく生きるための働き方を見つめ直すための貴重な時間に変えていきましょう。

どんな選択をしたとしても、あなたが笑顔で働ける場所は必ず見つかります。

→ 関連ページ:『専門家(医師・カウンセラー)を最高の味方にする方法』

→ 関連ブログ:『休職・復職判定の鍵となる「主治医」の役割と意見書』

あなたへのおすすめ