「何を言っても通じない」加害者への対応は変えるべきか?

「何を言っても通じない」
「全く反省の色がない」
「自分こそが被害者だと主張する」
もしあなたの職場の加害者がこのような特徴を持つ場合、あなたは深い絶望感を感じているかもしれません。その言動の背景には、通常の指導や常識的な対話が困難な、根深い思考特性が隠れている可能性があります。
この記事では、専門家の知見を解説し、医療的な診断名を前提にせず、現れている具体的な言動とその職務影響で評価・対応するという視点から、そのような加害者への対応を根本から変える必要性を論じます。
なお、特定の診断は医療行為であり、職場で見える一部の場面だけで判断できるものではありません(診断は持続的・広汎なパターンを要件とします)。
ハラスメントと関連が深い「問題行動」の特徴とは?
まず大前提として、医師でもない限り、他者を「人格障害だ」と素人判断することは非常に危険です。
ここでは「診断」ではなく、あくまでハラスメント対応のための「傾向分析」として、対処が困難な加害者の特徴を解説します。
- 他責的である
⇒ 自分は特別であると信じ、自分の非を認めず、他人を過度に攻撃する - 共感性が欠如している
⇒ 他者の権利を無視し、罪悪感を抱かない。平気で嘘をつき、他人を操作しようとする
これらの傾向を持つ加害者は、「他者のせい」にする論理が強固であり、「共感性がない」ため、通常の指導や反省が期待できません。
🔑 ワンポイント
人に病名を当てるのではなく、起きている「行為」に対処するのが原則です
なぜ「通常のハラスメント対応」が通用しないのか
ハラスメント対応の基本は「証拠の提示」と「論理的な説得」です。しかし、このタイプの加害者には、その常識が通用しない場合があります。
- 証拠を突きつけても逆上する
⇒ 録音などの明確な証拠を提示しても、「捏造だ」「罠にはめられた」と逆上し、攻撃がエスカレートする二次被害のリスクがあります - 「自分こそが被害者」だと主張する
⇒ 彼らの論理では「自分は常に正しい」ため、証拠は「自分への攻撃」と認識されます。「私こそがあなたのせいで傷ついた被害者だ」と主張をすり替えることもあります - 反省や改善が期待できない
⇒ 自分の言動が他者を傷つけているという認識(共感性)がないため、反省や改善を求めること自体が無意味である可能性が高いです
🌈 ちょっと一息
加害者本人への直接の対決はエスカレーションの恐れがあるため、人事・産業保健・弁護士経由で客観的手続(事実確認・是正措置)に付すのが安全です
専門家が推奨する「関わらない」が最善の理由と具体的な防御策
このタイプの加害者への最善策は、「加害者を変えようとしないこと」、そして「関わらない(物理的・心理的に距離を取る)」ことです。それが不可能な場合の具体的な防御策を紹介します。
1. 感情を一切見せない(反応しない)
- 加害者の「エサ」を与えない
⇒ 加害者は、あなたが怯えたり、泣いたりする反応を見て、自分の力を確認し満足感を得ます。一切の感情的反応(リアクション)を見せないことが最大の防御です
2. 事実の記録に徹する
- 目的は「安全確保とリスク低減」
⇒ 加害者に反省を促すためではなく、会社(人事)や弁護士に「これだけ悪質で改善の見込みがない」と報告するためです。記録の目的は、適正手続による是正と再発防止に資することです。
3. 会社(人事)への冷静な報告
- 「病名の推定」ではなく「事実」を報告
⇒ 「あの人はひどい」という感情的な訴えや、病名の推定は避け、「通常の指導の範囲を逸脱する言動が継続している」「共感的応対が困難で衝突が頻発している」といった事実と業務への影響を記し、産業保健での機能評価・就業配慮を相談します。
まとめ
今回は、専門家の知見を基に、「何を言っても通じない」加害者への対応について解説しました。
この記事のポイント
- 加害者に「他責的」「共感性の欠如」といった傾向が見られる場合、素人判断は危険であり、具体的な問題行動に対処する必要がある
- このタイプの加害者に通常の「説得」や「直接の証拠提示」は逆効果になるリスクがある
- 最善の策は「関わらない」ことであり、「加害者を変えよう」とする努力はせず、「自分の対応を変える」ことに集中すべきである
もし、あなたの職場の加害者が「何を言っても通じない」相手であるなら、あなたが自分を責める必要は全くありません。あなたの責任ではなく、加害者側の特性の問題です。自分を守るため、関わらない努力と冷静な記録を徹底しましょう。
→ 関連ページ:『なぜ人はハラスメントをしてしまうのか』へ
→ 関連ブログ:『ハラスメント加害者が「軽い処分」で済む本当の理由』へ
