専門家が警鐘 「相談窓口の二次被害」を防ぐ鉄則

勇気を出して会社の相談窓口に行ったのに
話した内容が加害者に漏洩してしまった…。それどころか、
「あなたにも問題があったのでは?」と逆に責められた…。
そんな、信頼を踏みにじられるような「二次被害」の恐怖が、ハラスメント被害者を最も苦しめています。
この記事では、弁護士など専門家の知見を解説し、会社の相談窓口を安全に利用し、自分を守り抜くための「3つの鉄則」を提示します。
鉄則1:「相談」ではなく「報告」と位置づける
相談窓口を利用する際、あなたの心構え一つで、会社側の対応は大きく変わります。二次被害を防ぐ第一の鉄則は、それを「相談」ではなく「報告」の場と位置づけることです。
1. 「相談」として扱われるリスク
- 主観的な悩み
⇒ 単なる「相談」や「愚痴」として窓口に行くと、「あなたの主観的な悩み」として処理され、公式な問題として扱われない可能性があります - 対応の先送り
⇒ 「話は聞きました」とガス抜きをされてしまい、具体的な調査や処分が先送りにされる原因になります
2. 「報告」として臨む重要性
- 客観的な事実の提示
⇒ 「客観的な証拠(録音、メールなど)に基づき、就業規則違反の事実を『報告』します」という姿勢で臨みます - 会社の調査義務の発生
⇒ 会社の調査対応は社内規程や事案により異なります。ただ、「報告書式(日時・場所・言動・証拠)で客観化」すると、事実確認に進みやすいのが実務です。法は相談(苦情を含む)にも広く対応体制を求めています。
🔑 ワンポイント
「相談」はあなたの主観、「報告」は客観的な事実。会社が動くのは「報告」です
鉄則2:「何を要求するか」目的を明確にする
専門的な視点から見れば、会社の相談窓口は「カウンセリングルーム」ではなく、「会社のリスク管理部門」です。
1. 目的が曖昧なことの危険性
「ただ話を聞いてほしい」という曖昧な目的で面談に臨むと、会社側に主導権を握られ、「丸め込まれる」という二次被害に遭うリスクがあります。
- 会社側の論理
⇒ 会社の目的は「被害者の救済」であると同時に、「会社のリスクを最小限に抑えること」です - 不利益な誘導
⇒ 「あなたのためを思って言うが…」と、不当な和解や退職勧奨に誘導される危険性すらあります(なお、相談や調査協力を理由とする不利益取扱いは法で禁止されています。疑いがあれば早めに外部窓口にも相談を。)
2. 要求事項を「具体的」に準備する
会社側に「何をすべきか」を考えさせるのではなく、こちらから「何を要求するか」を明確に提示することが、二次被害を防ぐ鉄則です。
- 具体的な要求リスト ⇒ 加害者の処分(懲戒、異動) ⇒ 被害者の配置転換(安全の確保) ⇒ 再発防止策の具体的な実施(研修など) ⇒ 慰謝料(金銭的補償)
🌈 ちょっと一息
あなたの要求が具体的であるほど、会社は「対応せざるを得ない」状況に追い込まれます
鉄則3:相談窓口の「中立性」を絶対視しない
特に社内の担当者(人事部など)が運営する相談窓口は、「従業員のため」であると同時に「会社のため」に存在するという、厳しい現実を理解しておく必要があります。
1. 感情的に全てを話す危険性
- 情報漏洩のリスク
⇒ 窓口の担当者と加害者の上司が個人的につながっている可能性は否定できません。感情的に話した証拠のない情報が漏洩し、報復を受けるリスクがあります - 守秘義務の限界
⇒ 担当者には社内規定上の守秘義務が課されているのが一般的ですが、制度によっては会社(経営層)への報告義務も同時に負っている場合があります
2. 自己防衛のための「情報の線引き」
窓口を信頼しつつも、自分の身は自分で守るという視点が不可欠です。
- 話す情報を線引きする
⇒ 「証拠がある事実」と「明確な要求」のみを冷静に伝える - 感情的な部分は伝えない
⇒ 「どれだけ辛かったか」という感情的な部分は、弁護士や社外のカウンセラーに話すべき領域です - 面談自体を記録する
⇒ 面談内容は記録化(メモ/可能なら録音)を検討。就業規則や法的留意点を確認のうえ実施してください。
まとめ
今回は、専門家の知見を基に、会社の相談窓口で「二次被害」を防ぐための3つの鉄則について解説しました。
この記事のポイント
- 窓口の利用は「相談」ではなく、客観的な証拠に基づく「報告」と位置づける
- 「話を聞いてほしい」ではなく、「加害者の処分」など具体的な要求を明確にする
- 窓口の中立性を絶対視せず、話す情報は「証拠がある事実」に絞り、面談も録音する
会社の相談窓口は、正しく使えば強力な解決ツールですが、使い方を誤れば諸刃の剣にもなります。これらの鉄則を守り、戦略的に窓口を活用することで、あなたの権利と安全を守り抜きましょう。
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